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「騎士団長、近衛兵の中で最近妙に羽振りが良くなったヤツ、あるいは出で立ちが急に派手になったヤツとかが居ないか調べてみてくれないか?」

「分かりました」

 騎士団長が部屋を出て行った後、ミハエルはドロシーに向き直った。

「ドロシー嬢、聞き辛いことだが敢えて聞く。君は本当にラングレー公爵の娘なのか?」

「......それはどういう意味でしょうか...」

 長い沈黙の後、ドロシーは絞り出すようにそう呟いた。

「君がラングレー公爵の実の娘ではないという噂が流れているんだ。そしてそんな噂を後押しするかのように、事が露見するのを恐れたラングレー公爵は、刺客を送り込んで君のことを容赦なく始末しようとした。実の娘に対する仕打ちとはとても思えん」

「...私がラングレー公の血を引いているのは間違いありません...ただ、正妻の子ではありませんが...」

 ドロシーは観念したかのように話し始めた。

「妾腹ということか?」

「...はい...私の母はラングレー公爵家に勤める侍女でした...」

「なんと...お手付きだったのか...」

「...えぇ、しかも母の話によると無理矢理手篭めにされたそうです...」

 ドロシーは嫌悪感剥き出しの表情を浮かべ、まるで汚い物を見るかのようにそう吐き捨てた。

「それは...酷い話だな...」

 ミハエルも気分が悪くなって来た。

「...そして母が妊娠したと知るや否や、ラングレー公は母を辞めさせ家を買い与えてそこに囲ったそうです...」

「なるほど...いつか手駒にしようと思ってキープしていたという訳か...」

 ミハエルは呆れたような表情を浮かべてそう言った。

「...そうだと思います...ラングレー公には娘が居ませんから...」

 実の父親のことを「ラングレー公」と呼ぶ辺りに、ドロシーの胸中を慮ることが出来るというものだろう。

「貴族の娘としての教育は受けていたのか?」

「...はい、私も侍女という名目で公爵家に勤めておりましたから...」

「侍女? 婚外子ではなくて?」

「...その...正妻様がそれはもう嫉妬深いお方ですので...」

「あぁ、なるほど...正体を隠す必要があったという訳か...」

 ミハエルは心から納得した。

「...はい、間違っても正妻様には気付かれてはならないと徹底させられました...」

「それは...大変だったな...」

 ミハエルは心から同情した。

「...そして貴族の娘としての教育をコッソリと行っている内に、元々体の弱かった正妻様が儚くなりまして...私は晴れてラングレー公の娘であると公言されるようになったんです...」
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