王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「た、確かにちょっとフライングしてしまったことは認めるが...」

「フライングなんてレベルじゃなかったと思いますが?」

 ファリスの突っ込みが冴え渡る。

「うぅ...そ、それを言われると...」

 ミハエルはなにも言えなくなってしまった。

「出来レースであることをお認めになるんですね?」

「いやだから! それだけは本当に違うんだ! どうか信じて欲しい! もっとも、今の僕がそう言った所で説得力はないだろうが...」

 ミハエルはなんとか必死に訴えたが、

「えぇ、全くありませんね」

 ファリスはけんもほろろだった。

「うぅ...」

「とにかく殿下、このままじゃ不公平過ぎますよ。私だけじゃなく、ミシェルさんやソニアさんからも苦情が上がるのは確実でしょう」

 実は、ミシェルとソニアは既に王妃の座を諦めてライラの応援に回っているのだが、そのことをまだファリスは知らないのだった。

 ソニアに唆されてお茶会を開いた時も、きっとなにかソニアなりに考えがあってのことだろうと思って、その真意を探るべく敢えて誘いに乗ってみたのだが、結局のところ良く分からなかった。

「そ、そうだよな...」

 そしてまた、ミハエルも同様にミシェルとソニアの思惑を全く知らない。だからこそ、こうしてファリスの指摘に頭を抱えているという訳だ。

「そこで殿下に一つご提案があるのですが」

「提案?」

「私達にもこうして殿下と二人っきりになる機会を与えてくれませんか? 本合宿の新たな命題だとか言えば、あのお二方もきっと疑うことはないでしょうから」

「なるほど...」

「それでライラさんとの一件はチャラにしてあげてもいいですよ?」

「......」

 ミシェルはしばし考え込んだ。

「それにしても今日は蒸しますねぇ...」

 そろそろ頃合いとみたファリスは仕掛けることにした。これ見よがしにブラウスの胸元を開け、扇子でパタパタと風を送ってミハエルを挑発する。

「そ、そうだな...」

 目のやり場に困ったミハエルは、お茶を飲んで誤魔化すことにした。すっかり冷めたお茶を一気に飲み干す。

 勝った! ファリスは心の中でニヤリと笑った。

「ねぇ~♪ 殿下~♪ 私にも~♪ あんな熱烈な~♪ キスをして~♪ 欲しいです~♪」

 ファリスはミハエルの側に近付いて撓垂れ掛かり、間延び口調に戻してここぞとばかりに甘えて見せた。

 即効性の媚薬と聞いているので忽ち効果を発揮するはず。するとミハエルの両手がファリスの肩に掛かった。

 ファリスは目を閉じて唇を突き出し、ドキドキしながらミハエルのキスを待った。
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