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 ライラは、自分の膝の上でスヤスヤと眠ってしまったミハエルの寝顔を、ボンヤリと見詰めながら途方に暮れていた。

「こ、これどうしよう...」

 夜中故、誰かに目撃される恐れはほとんどないだろうが、いつまでもこのままの体勢という訳にはいくまい。

 そもそも足が痺れて来て辛い。ライラは身動ぎも出来ない状態に段々と疲れて来た。夜中ということもあり、次第に眠気が押し寄せて来る。

 そしていつしかコックリコックリと船を漕ぎ始めた。やがてついにライラも完全に寝落ちしてしまい、まるでミハエルの頭の上に覆い被さるような格好になって眠ってしまった。

 ややあって目を覚ましたミハエルは、目の前の状況が良く理解できなかった。メガネがずり落ちてキレイな素顔を晒しながらスヤスヤと眠りこけているライラの寝顔が、自分の目と鼻の先にあるのだ。混乱するのも無理はない。

 だがここで慌てて取り乱すようなミハエルではない。状況は良く分からないが、まるでキスしてくれと言わんばかりの体勢で、ライラが無防備に寝顔を晒しているのだ。
 
 千載一遇のこのチャンスを逃してなるものかと、ミハエルはライラの膝の上からそっと頭を動かし、少しずつライラの顔に近付き、

 チュッ♪

 徐に唇を奪った。

「!?!?!?」

 途端に目を覚ましたライラは、状況に気付き声を上げようとするが、ミハエルに唇を塞がれてるためそれもままならない。ただくぐもった音を漏らすのみだ。

 そんなライラの様子を意に介さず、調子に乗ったミハエルは舌を入れてライラの口の中を掻き回し始めた。

 事前に甘い物でも食べていたのか、ライラの唾液は甘い味がした。

「!?!?!?」

 口の中をミハエルの舌で蹂躙されたライラが再びくぐもった音を漏らす。そして手足をバタバタと動かして抵抗し、なんとか脱出を試みようとするが、ミハエルは逃がさないとばかりにライラの体をギュッと抱き締めて放そうとしない。

 しばらくしてライラの抵抗が止んだ。グッタリして動かなくなった。ミハエルはここぞとばかりに畳み掛け、思う存分ライラとのファーストキスを堪能した。

「フゥ...」

 どのくらいの時間が経過したのだろうか? やっと満足したのか、ミハエルは長い息を一つ吐いてようやくライラの唇を解放してあげた。

 ライラはまるで糸が切れたマリオネットのように、ミハエルのされるがままになっていた。そんなライラの耳元で、

「ご馳走様♪ とっても美味しかったよ♪」

 とミハエルは囁いたのだった。
 
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