70 / 171
70
しおりを挟む
「へっ!?」
突然の出来事に驚いたのか少女の動きが止まった。
「その両手に抱えている物を改めさせて貰おうか」
そう言って物陰から現れたミハエルは、少女の両手を軽く握った。
「やっぱり思っていた通りだったか。ドロシー嬢、伝書鳩とは考えたもんだな」
そう、少女とはドロシーのことであり、彼女の両手の中には今にも飛び立たんとする伝書鳩の姿があったのだ。
ミハエルはドロシーの両手からそっと伝書鳩を抜き取り、その足元を確かめてみた。
「これが伝言内容を書いた紙だな」
その間、観念したのかドロシーはされるがままだった。ミハエルは伝書鳩の足元にくくり付けられている紙を外して慎重に広げてみた。
「なるほど。こんな風にして外部と連絡を取っていたんだな? ドロシー嬢、これはもう言い逃れ出来ないぞ? ライラ嬢の実家を襲うようにと指示を出してるじゃないか?」
「うぅ...」
ドロシーはその場にヘタりこんでしまった。
「引っ立てろ」
ミハエルがそう指示を下すと、いつの間にやら部屋の中に入って来ていた近衛兵二人が、ドロシーを両脇から支えるようにして連行して行った。
◇◇◇
「ライラ嬢、良くやってくれた。君の考えた通りだったよ」
ややあってライラが起き出して来た頃のこと、ミハエルは朝食を摂ろうと食堂に向かっていたライラを呼び止めた。
「やっぱりそうでしたか...それじゃあ今、ドロシーさんは...」
「あぁ、身柄を拘束してちょうど尋問をしている最中だ」
「どんな様子ですか? 正直に白状しましたか?」
「いいや、黙りを決め込んでいる。父親であるラングレー公爵を呼べとの一点張りだ。どうやら父親に泣き付くつもりらしい」
「どうなさるんですか? お認めになられるんですか?」
「まさか。罪人の言うことなど聞くつもりはないさ。安心してくれ。ドロシー嬢が白状するのも時間の問題だろう...アフッ...」
そこでミハエルは軽くアクビを漏らした。
「殿下、お疲れのようですね?」
「あぁ、なにせ寝ずの番をしていたからな。君の言う通りだったよ。鳩を放すなら早朝に限ると」
「えぇ、私の領地で鳩を飼っている人が毎朝そうしてましたから。それにしたって...なにも殿下御自らが寝ずの番をすることはなかったんじゃありませんか?」
ライラは未だにアクビを噛み殺しているミハエルを、呆れたような目で見やった。
「こればっかりは他の者に任せたくなかったんだ。僕自身が招いたことだからね。どうしても自分の力でやりたかったんだよ」
「それはまぁ...ご立派だとは思いますが...」
ライラは曖昧に頷くしかなかった。
突然の出来事に驚いたのか少女の動きが止まった。
「その両手に抱えている物を改めさせて貰おうか」
そう言って物陰から現れたミハエルは、少女の両手を軽く握った。
「やっぱり思っていた通りだったか。ドロシー嬢、伝書鳩とは考えたもんだな」
そう、少女とはドロシーのことであり、彼女の両手の中には今にも飛び立たんとする伝書鳩の姿があったのだ。
ミハエルはドロシーの両手からそっと伝書鳩を抜き取り、その足元を確かめてみた。
「これが伝言内容を書いた紙だな」
その間、観念したのかドロシーはされるがままだった。ミハエルは伝書鳩の足元にくくり付けられている紙を外して慎重に広げてみた。
「なるほど。こんな風にして外部と連絡を取っていたんだな? ドロシー嬢、これはもう言い逃れ出来ないぞ? ライラ嬢の実家を襲うようにと指示を出してるじゃないか?」
「うぅ...」
ドロシーはその場にヘタりこんでしまった。
「引っ立てろ」
ミハエルがそう指示を下すと、いつの間にやら部屋の中に入って来ていた近衛兵二人が、ドロシーを両脇から支えるようにして連行して行った。
◇◇◇
「ライラ嬢、良くやってくれた。君の考えた通りだったよ」
ややあってライラが起き出して来た頃のこと、ミハエルは朝食を摂ろうと食堂に向かっていたライラを呼び止めた。
「やっぱりそうでしたか...それじゃあ今、ドロシーさんは...」
「あぁ、身柄を拘束してちょうど尋問をしている最中だ」
「どんな様子ですか? 正直に白状しましたか?」
「いいや、黙りを決め込んでいる。父親であるラングレー公爵を呼べとの一点張りだ。どうやら父親に泣き付くつもりらしい」
「どうなさるんですか? お認めになられるんですか?」
「まさか。罪人の言うことなど聞くつもりはないさ。安心してくれ。ドロシー嬢が白状するのも時間の問題だろう...アフッ...」
そこでミハエルは軽くアクビを漏らした。
「殿下、お疲れのようですね?」
「あぁ、なにせ寝ずの番をしていたからな。君の言う通りだったよ。鳩を放すなら早朝に限ると」
「えぇ、私の領地で鳩を飼っている人が毎朝そうしてましたから。それにしたって...なにも殿下御自らが寝ずの番をすることはなかったんじゃありませんか?」
ライラは未だにアクビを噛み殺しているミハエルを、呆れたような目で見やった。
「こればっかりは他の者に任せたくなかったんだ。僕自身が招いたことだからね。どうしても自分の力でやりたかったんだよ」
「それはまぁ...ご立派だとは思いますが...」
ライラは曖昧に頷くしかなかった。
21
お気に入りに追加
3,715
あなたにおすすめの小説
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない
天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。
だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる