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「へっ!?」

 突然の出来事に驚いたのか少女の動きが止まった。

「その両手に抱えている物を改めさせて貰おうか」

 そう言って物陰から現れたミハエルは、少女の両手を軽く握った。

「やっぱり思っていた通りだったか。ドロシー嬢、伝書鳩とは考えたもんだな」

 そう、少女とはドロシーのことであり、彼女の両手の中には今にも飛び立たんとする伝書鳩の姿があったのだ。

 ミハエルはドロシーの両手からそっと伝書鳩を抜き取り、その足元を確かめてみた。

「これが伝言内容を書いた紙だな」

 その間、観念したのかドロシーはされるがままだった。ミハエルは伝書鳩の足元にくくり付けられている紙を外して慎重に広げてみた。

「なるほど。こんな風にして外部と連絡を取っていたんだな? ドロシー嬢、これはもう言い逃れ出来ないぞ? ライラ嬢の実家を襲うようにと指示を出してるじゃないか?」

「うぅ...」

 ドロシーはその場にヘタりこんでしまった。

「引っ立てろ」

 ミハエルがそう指示を下すと、いつの間にやら部屋の中に入って来ていた近衛兵二人が、ドロシーを両脇から支えるようにして連行して行った。


◇◇◇


「ライラ嬢、良くやってくれた。君の考えた通りだったよ」

 ややあってライラが起き出して来た頃のこと、ミハエルは朝食を摂ろうと食堂に向かっていたライラを呼び止めた。

「やっぱりそうでしたか...それじゃあ今、ドロシーさんは...」

「あぁ、身柄を拘束してちょうど尋問をしている最中だ」

「どんな様子ですか? 正直に白状しましたか?」

「いいや、黙りを決め込んでいる。父親であるラングレー公爵を呼べとの一点張りだ。どうやら父親に泣き付くつもりらしい」

「どうなさるんですか? お認めになられるんですか?」

「まさか。罪人の言うことなど聞くつもりはないさ。安心してくれ。ドロシー嬢が白状するのも時間の問題だろう...アフッ...」

 そこでミハエルは軽くアクビを漏らした。

「殿下、お疲れのようですね?」

「あぁ、なにせ寝ずの番をしていたからな。君の言う通りだったよ。鳩を放すなら早朝に限ると」 

「えぇ、私の領地で鳩を飼っている人が毎朝そうしてましたから。それにしたって...なにも殿下御自らが寝ずの番をすることはなかったんじゃありませんか?」

 ライラは未だにアクビを噛み殺しているミハエルを、呆れたような目で見やった。

「こればっかりは他の者に任せたくなかったんだ。僕自身が招いたことだからね。どうしても自分の力でやりたかったんだよ」

「それはまぁ...ご立派だとは思いますが...」

 ライラは曖昧に頷くしかなかった。
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