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 その後はお互いになんとなく黙り込んでしまった。

 聞いて良いのか分からなかったが、沈黙に耐えられなくなったライラは、

「...後始末は大変みたいですね?」

 思わずそう口にしていた。

「えっ!?」

 それに対してミハエルはビックリしたような表情を浮かべた。

「あれ!? 違いましたか!?」

 そんなミハエルの反応に今度はライラが、もしかしたら全然お門違いだったのかも知れないと思って再び問い掛けた。

「後始末って!?」

 ミハエルはそれには答えず逆に聞き返した。

「え~と...その...レイチェルさんの...」

 ライラはちょっと言い辛そうにしている。

「あぁ、その件か。そっちはもうとっくにケリが付いたから問題ないよ」

「あ、そうなんですね...」

 違ったようだ。だったら今、ミハエルは一体どんな厄介事を抱えているんだろうか? ライラは聞いてみたいとも思ったが、国政に関する重要事だったりした場合、好奇心の赴くままに聞くのはマズいだろうと思って黙っていた。

 ややあってミハエルが徐に口を開いた。

「...ライラ嬢はドロシー嬢と親しいか?」

「いえ、特には。挨拶を交わす程度で、あんまり話をしたことはありませんね」

 ついさっきまで、ミシェルとの間で話題に上っていたドロシーの名前が出たことに、ちょっと驚きながらもライラは正直に答えた。

「...そうか...」

 一つ頷いたっきり、またミハエルは黙り込んでしまった。

「...ドロシーさんがどうかしたんですか?」

 聞いて良いものかどうか一瞬躊躇ったが、またしても訪れた沈黙に耐え切れず、ライラは思い切って尋ねてみることにした。

「...これはまだオフレコにしておいて欲しいんだが...」

 しばし間を置いてミハエルが重い口を開いた。

「分かりました。決して他言はしません」

「...ドロシー嬢は...いや、彼女の実家であるラングレー公爵家は密輸に関わっているのではないか? という疑いが掛けられている」

「......」

 ライラはビックリして思わず絶句してしまった。

「...隣国...」

 そして無意識にそう呟いていた。

「えっ!?」

 それに気付いたミハエルが聞き返す。

「あ、いえ...すいません...その、さっきミシェルさんが言っていたのを思い出しまして...」

「ミシェル嬢が!? なんて言ってた!?」

「あの...ドロシーさんが隣国の事情にヤケに詳しいって...」

 ライラは慎重に言葉を選んだ。

「あぁ、なるほど。お茶会の時、彼女も同じテーブルだったな」

 ミハエルは得心が行ったように頷いた。
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