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「へ!? それってどういう意味ですか!?」

 ライラは首を捻った。

「言葉通りの意味ですけど? 王妃になったら主催する立場になることの方が多くなるんですから」

 ミシェルはさも当然とばかりにそう言い切った。

「いやいやいや、ちょっと待って下さいよ。なんですかそれ? 意味分かりませんけど? 私なんかが王妃に選ばれるはずがないじゃありませんか?」

「そうでしょうか? 少なくとも今の段階では一番可能性があると思いますけど?」

「そう思う根拠は?」

「まず第一に、ミハエル殿下のお気持ちです。ライラさんは違うテーブルだったから気付いてなかったかと思いますが、ミハエル殿下はそれはもう愛おしい者を見るような眼差しでライラさんのことを見詰めていましたよ?」

「ぴよっ!?」

 意表を突かれたライラが奇声を発した。

「そして第二に、ライラさんの所作が王妃に相応しい格調高いものに変化していたことです。ここに来た時に比べたら段違いに成長していましたよ? これはきっとマナー教育の賜物ですね」

「ひえっ...」

 ライラとしてはそんな自覚は全くなかった。マナー講座の講師がとにかく厳しい人だから、怒られないようにと必死に学んでいただけだったのだが、結果としてそれがライラの成長に繋がったということなのだろう。

 ライラは、そう言えばソニアにも同じようなことを言われたなと思い出していた。やはり見る人が見れば分かるものなのかも知れない。

 まさにミハエルの目論見通りの展開になった訳である。そう気付かされたライラは思わず唇を噛んでいた。

「王子様のお気に入りであり、王妃としての資格も十分兼ね備えている。これはもう決定と言ってもいいんじゃないですかね?」

「いやいやいやいや、ちょっと待って...ちょっと待って下さいよ...確かに多少はマシになったかも知れませんが、所詮は付け焼き刃ですよ? 私の本質はなんにも変わってないんですから。中身は無学な田舎者のまんまなんですよ? そんな私が生粋のお嬢様に敵う訳ないじゃありませんか? どう考えたって王妃になんか相応しくないですって...」

 ライラは必死に訴えたが、

「経験は時間を掛ければ蓄積されます。場数を踏むことで揺るぎない自信が身に付くようになるんです。だからなにも問題ありませんよ?」

 ミシェルが揺らぐことはなかった。

「それになにより、王子様に愛されていること。この点が一番重要ですからね。ミハエル殿下ならきっと長い目で見守ってくれることでしょう。良かったですね?」

「ひょわっ!?」

 ミシェルがそう断言した途端、ライラは頭の天辺から足の爪先まで真っ赤になってしまった。
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