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「いやいや、ちょっと待って下さいって...私、そんな高尚な志なんか持ち合わせていませんよ...」

 ライラは困惑したような表情を浮かべた。

「あら!? 違ったの!?」

「違いますよ。私はただ単に運良く文才があったので、手っ取り早く稼げる手段を見付けたから、それで金儲けしようと思っただけなんです。実家の懐事情を少しでも改善できればと思って。要するに、自立しようと思ったのは経済的な理由のみなんですよ」

「あぁ、その気持ちは良く分かるわ。ウチも同じだからね...」

 ソニアはしばし遠い目をした。

「あ、それともちろん、小説を書くのが楽しくなって来たからってのもありますけどね」

「そういや盛んにメモを取ってたっけね? もしかして今回の騒動も小説化する気でいるの?」

「いや、さすがに今回のネタは...オフレコにした方が良いでしょう...」

「まぁ確かにそうよねぇ...王家からもSTOP掛かりそうだし...」

 渋い顔でそう言ったライラに、ソニアも納得したように頷いた。王妃候補を集めた合宿中に起きた毒殺未遂事件。そんなことが公になったりしたら、大スキャンダル間違い無しだ。王家としても隠蔽するしか無いだろう。

「多少アレンジを加えて何れ形にするかも知れませんけどね。今の時点ではお蔵入りと言った所です」

「なるほど...ねぇ、その時は私を美少女探偵として描いてくんない?」

 ソニアは「キャルーン♪」とばかりに輝かしい笑顔を浮かべてお願いポーズを取った。

「な、なんて図々しい...」

 ライラはかなり引いた。

「いいじゃない~! 酷い目に遭ったんだからさぁ~! 探偵役のあなたに協力だってしてあげたじゃないのよぉ~! ちょっとくらい優遇してくれたっていいでしょう~!」

 ソニアはプンプンと可愛いく剥れた。

「分かった分かった...分かりましたよ...前向きに善処しましょう...」

 ライラはやれやれとばかりに両手を広げた。

「やったぁ~♪ お願いねぇ~♪」

 ソニアは一転して年相応の笑顔を浮かべた。

「その代わり、私のお願いも聞いて貰えませんか?」

「なあに?」

「私と殿下をくっ付けようと画策するのは止めて下さい」

「うん、それは無理」

 ソニアは即答した。

「だからなんでですかぁ~!」

 ついにライラは涙目になってしまった。

「だってぇ~♪ 出会いからして運命のようなものを感じるんだものぉ~♪」

 ソニアはまるで夢見る少女のように、両手を胸の前で組んだ。

「あれのどこにそんな要素が!?」

 ライラは信じられないとばかりに頭を振った。なにせ自分の中では消したい黒歴史No.1なのだから。
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