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「いやだから...ありがた迷惑なんですってば...」

 ライラは頭を抱えながらそう呟いた。

「なんでよ? 殿下のことが嫌いなの?」

「いえ、そういう問題じゃなくてですね...」

「イケメンじゃない? 絵に描いたようなキラキラ王子様だし」

「それは認めますけど...」

「容姿に不満は無いんでしょう?」

「えぇ、まぁ...」

 ライラは不承不承と言った感じで軽く頷いた。

「だったら王妃になるのがイヤだって言うこと?」

「その通りですよ...最初っからそう言ってるじゃないですか...」

「なんでそんなにイヤがるのよ? この国の女性のTOPに立てるのよ?」

 ソニアは本気で分からないと言った表情を浮かべた。

「いやいや、私にそんな上昇志向はありませんし...野心もありませんから...」

 ライラは肩を竦めた。

「あなた最初の日に言ってたわよね? 自分は貴族令嬢としてではなく、職業婦人として生きて行くんだって?」

「えぇ、言いましたけど...それがなにか?」

 ライラは質問の意図が分からず首を捻った。

「ある意味、王妃も職業婦人の範疇に含まれるべき存在だと言えるんじゃないの?」

「はい!? それってどういう意味なんですか!?」

 今度はライラが本気で分からないと言った表情を浮かべる。

「TOPに立つ者としてリーダーシップを発揮し、この国をより良い方向に導いて行くのが王妃の務めなのよ? つまりはあなたの目指す職業婦人のTOPに位置する立場ってことになるわ。あなたもしかして、王妃っていうのはただ跡継ぎを産むだけの存在だとか思ってるんじゃないでしょうね?」

「い、いえ...そ、そんなことありませんよ...」

 ライラの目が完全に泳いでいる。そう思っていたことがバレバレであった。

「ハァ...そんな訳ないじゃないのよ...王妃ってのは配偶者である王を影から支えて、国内の派閥争いなんかの仲裁をしたり、時には外交にも手腕を発揮する必要があるのよ? 昔、国を傾けた毒婦王妃なんか今はどこにも居ないわ。昨今の王妃は皆素晴らしい人達ばかりだった」

 そこら辺の歴史は既にミハエルから聞いていたので、ライラとしても十分理解していたつもりだったが、やはり事が自分に関わって来るとなると、冷静ではいられなくなっていたのかも知れない。

「あなた、貴族女性としてのあり方ってもんを否定したかったんでしょ? 政略の駒として跡継ぎを産むだけの存在に甘んじるんじゃなくて、これからは女性も働いて自立するべきだって主張したかったんでしょ? だったらあなたが王妃になって、そういう流れを後押しするよう先頭に立つべきなんじゃないの?」
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