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「動機を聞いてもいいですか? そこまでして王妃になりたかった理由って一体なんなんです?」

「...それは...我が家の名誉を回復させるためよ...」

「名誉?」

「...えぇ、あなたは知らないでしょうけど...辺境伯家の価値を良く知らない、あるいは曲解している人って結構多かったりするのよ...」

「どういう風に?」

「...例えば辺境という片田舎でのほほんと過ごしている田舎者、若しくはなにかヘマを仕出かして地方に飛ばされた落ちぶれ者とかね...冗談じゃないわ! 私達が日々どれだけ隣国の脅威に晒されているか知りもしないで! 頭が平和ボケしている連中に、その平和を維持するための苦労がどれ程のものかをキッチリ分からせるためにも、私は絶対に王妃にならなけりゃいけなかったのよ!」

 レイチェルの最後のセリフはまさに魂の叫びだった。だがライラは至って冷静に、そして詰まらなそうにこう言った。

「なんですかそれ? 下らない」

「下らないですって!? あんたに一体なにが分かるって言うのよ!」

「私はてっきり、ミハエル王子のことが好きで好きで堪らないから、どんなことをしてでも手に入れてやるっていう想いで犯行に及んだものとばっかり思っていましたよ」

「そんな訳ないじゃない! 誰があんな腹黒王子を好きになんかなるもんですか!」

「あ、腹黒は有名なんだ...」

 ライラがチラッとミハエルの方をめを向けてみると、ミハエルはあからさまにこれ以上ないほどの渋い顔を浮かべていた。

「まぁなんにせよ、やり方を間違えましたね。家の名誉を回復させるためならば、もっと違ったやり方はいくらでもあったはずです」

「うぐっ!」

 レイチェルは悔しそうに唇を噛み締めた。そこでライラはスッと身を引いた。すかさずミハエルが前に出て、

「レイチェル嬢、君を拘束させて貰う。他にも余罪がありそうだしな。全て吐いて貰うぞ。覚悟しろ。おい! 引っ立てろ!」

『ハッ!』

 そう指示を下すと、後ろに控えていた近衛騎士がレイチェルを両脇から拘束して連れ出そうとする。

 観念したのか、レイチェルは大人しく連行されて行った。去り際に一言、

「とんだ名探偵が居たものね...あなた、推理物を書いた方がいいんじゃない?」

 と自嘲気味に呟いた。

「そうかも知れませんね。考えておきますよ」

 ライラは苦笑しながらそう返した。

「本が出るのを獄中で楽しみにしてるわ...」

「良かったら差し入れしましょうか?」

「あら、そうしてくれるの? フフフ、ありがとう。待ってるわ。是非ともお願いするわね?」

「えぇ、必ず...」
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