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 ミハエルによる説明が終わり、これから約三ヶ月間過ごすことになる後宮へと移動した候補者達は、早くも三つのグループに分かれようとしていた。

 まず一つ目は一番の高位貴族であるドロシーと次席のレイチェルという所謂高飛車コンビ。誰も近寄り難いオーラを放っている。

 二つ目がライラとミシェルという謂わば作家とそのファン代表みたいな組み合わせ。早速ミシェルがライラを質問攻めにしていたりする。

 そして三つ目がファリスとソニアというこの中では一二の年下コンビ。この二人は年が近いこともあり、最初から意気投合したようだ。

 そんなこんなで、いよいよ王太子ミハエルの婚約者選び、ひいては未来の王妃を選ぶべく選考合宿がスタートした。


◇◇◇


「ヒーハー...ヒーハー...」

「ほら! また背筋が曲がってますよ! ライラさん、何度言ったら分かるんですか! あくまでもエレガントに! 貴族令嬢としての誇りを胸に!」

「は、はひ~...」

「だから紅茶は音を立てて飲まない! あなたは野生児ですか!?」

「ふ、ふぃ~...」

「ほらまた! カップを置く時にカチャカチャと音を立てない! あなたは子供ですか!?」

「ほ、ほひぃ~...」

 合宿初日からライラは王族の、つまりは貴族のマナー講座を強制的に受けさせられて、既に青息吐息状態となっていた。

 そして王家や王国の歴史を学ぶ講座には全員が受講を希望した。やはり選考する上での評価に繋がると皆思ったのだろう。そしてここでも、

「起きなさい、ライラさん! やる気が無いなら出て行って貰って結構ですよ!」

「は、はいぃ...す、すみましぇん...」

 ライラはマナー講座での疲れが祟ったのか、居眠りをこいて講師に怒られていた。ちなみになぜかライラだけはこの講座も必須となっていた。

 だがしかし、今回怒られたのはライラだけではなかった。

「ファリスさん、ソニアさん、私語を慎みなさい! ここはカフェテリアじゃないんですよ!」

『は、はい! も、申し訳ございません...』

 年下コンビもキッチリ怒られていた。

 そんな様子を高飛車コンビは冷ややかな目で見やっていた。


◇◇◇


「ふぁ~...つ、疲れた...初日からこれじゃ身が持たない...」

 今は長い一日が終わって夕食の席。ライラは食堂のテーブルに突っ伏して疲労困憊のご様子だ。

「ライラさん、お疲れ様です。でもそんな格好してちゃダメですよ? ここでの一挙手一投足が選考の対象になるんですから」

 そんなライラをミシェルが優しく嗜める。

「そんなんどーでもいいですって...私は王妃になりたいなんて更々思ってないんですから...」

 ライラは完全にやさぐれモードだった。


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