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「な、なによそれ~! 人を勝手に小説のモデルにしないでよね!」

 ソニアは一人だけプリプリと怒っているが、他の候補者達は満更でもないような表情を浮かべていた。

「フム、どうやら自己紹介は一通り終わったようだな。みんな、それぞれの人となりが分かって良かったと思う」

 するとそれまで黙って見守っていたミハエルが口を開く。

「ときにライラ嬢、君は本当に僕の婚約者の座に興味無いのかい?」

「えぇ、微塵も。なんで私みたいなのが選ばれたのか不思議でなりません」

 ライラは本当に分からないといった表情を浮かべた。

「選ばれたのにはちゃんとした理由がある」

「どんな?」

「それは追々明らかになるだろう」

「ハァ...そうなんですか...」

 なんともハッキリしないミハエルの言い方に、ライラは曖昧に頷くしかなかった。

「さて、君達はこれから後宮に移動し、みんなして共同生活を送ることになる訳だが、生活するに当たり幾つかルールが有るんだ。今からそのルールを事前にみんなに伝えておこうと思う」

 ミハエルは改めて全員に向き直って話を進める。

「まず第一に、外部との接触を一切禁ずる。これには不満もあるだろうが、選考レースを公平に行うためだ。どうか理解して欲しい」

「ちょっとお待ち下さい。家族とも会えないんですの? それではなにかあった時に困ってしまいますわ」

 候補者達を代表する形でドロシーがそう言った。

「緊急の場合に限り面会を許可しよう。ただし、緊急かどうかの判断は我々が下す」 

「緊急と判断されなかった場合は面会も出来ないってことですの?」

「そういうことだ。もしこの時点で不満が有るという者は今すぐ辞退して貰って構わない」

 ミハエルは全員を見渡したが、誰一人席を立つ者は居なかった。

「結構、それじゃ第二に移る。後宮では普通の日常生活を送って貰う訳だが、ライラ嬢のセリフじゃないが、後宮での君達の一挙手一投足は全て監視されていると思ってくれ。普段の立ち居振舞いが選考結果に影響を与えるということを踏まえた上で行動してくれ」

 ミハエルはそこで一旦言葉を切ってもう一度全員を見渡した。誰も口を開く者は居なかった。ミハエルは一つ頷いた後、

「次に第三だが、先に連絡した通り、合宿中特に課題などを君達に課すつもりはない。ただし一つだけ。三ヶ月の間に一度は自分主催のお茶会開くこと。これをノルマとする。ちなみにこのお茶会には僕も出席する予定になっている。ルールは以上だ。なにか質問は?」

 
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