聖女になんかなりたくない少女と、その少女を聖女にしたがる王子の物語

真理亜

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第2章 聖女と聖獣

第43話 激闘

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 良かった~! ちゃんと当たったよ~! あ、リシャール達、避難を開始してくれるみたいだ! しっかり伝わって良かったよ! これで戦い易くなるな! セイラは初撃が命中したこと、リシャール達を守れたことで、ホッと息を吐いた。

『セイラ、油断しないで! 来るわ!』

「うおっ! ファーヴニルがこっちにブレス撃って来た! ど、どうすれば?」

 セイラは焦った。

『クロウ、あなたのブレスで相殺して!』

「クルルル!」

 そうだった! クロウもブレス撃てるんだよ! しかも大きくなったから菜園で撃とうとした時よりデッカイ! 黒と白のブレスがぶつかって弾けた!? 相殺したって事かな!? あぁ、こんな時になんだけどキラキラ光ってなんかキレイ...ってそんな場合じゃないのに、思わずセイラは見とれてしまった。

『セイラっ! ボーってしてないであなたも弓矢で牽制しなさいっ!』

 べ、別にボーっとなんかしてねぇっての! 撃ちゃいいんだろ撃ちゃ! ...か、固いっ! 当たってはいるんだけど、全部ウロコに弾かれちまう~! 避けようともしないし!

『顔を、目を狙いなさいっ!』

 おぉ、今度は露骨に嫌がってる! 顔背けてる! いい感じじゃないか!? ファーヴニルがなんかイライラしてる?

「グオォォォォッーーーーー!!!!!」

 またブレス撃って来た! それを今度もクロウが相殺する。セイラがまた顔面攻撃する。なんかルーティンみたいになって来ていた。

 そんな攻防を何度か繰り返す内、焦れて来たのか、ファーヴニは物理攻撃を仕掛けて来た。

 長い尻尾を振り回して来たり、強靭な爪で引き裂こうとして来たり、鋭い牙で噛み砕こうとして来たり、だがそれのどれも、機動力に勝るクロウが軽々と躱す。

 埒が明かないと判断したのか、ファーヴニルは距離を取って行く。下に降りて行くようだ。

『チャンスだわ! 奴は地上に降りて人を操ろうとしている。クロウ、最大速度で急降下、奴の下に回り込んで!』

「クルルル!」

 うぁぁぁっ! お、落ちる~! 内臓が口から飛び出しそう~! 体中の血が逆流して頭が重い~! 目が回りそう~! き、気持ち悪い...セイラは今にも気絶しそうになった。

『良し、回り込めたわ! クロウ、ブレス最大出力! 顎を狙って! セイラ、チャンスは一瞬よ。逆鱗を撃ち抜いて!』

「クルルル!」

 逆鱗っていうのは、竜の顎の下に一枚だけ逆さに生えてるウロコの事で、竜の唯一の弱点らしい。だから必死に守ろうとするらしいんだけど、下から突き上げるようにクロウのブレスを直撃させられれば一瞬だけど顎が浮く。要はアッパーカットだ。

その一瞬にアンジュの元恋人がファーヴニルの動きを止めて、セイラが逆鱗を撃ち抜く手筈になっている

『やったわ、奴の顎が上がった! 今よ、シン!』

 シンっていうのがアンジュの元恋人名前らしい...って、しんみりしてる場合じゃない! それより私はファーヴニルの動きが止まった後の一撃に集中しなきゃ! セイラは気を引き締める。

『奴の動きが止まった! セイラ、後は任せたわっ!』

 よっしゃぁ~! やったるぞ~! 魔力全開! 全身全霊! 乾坤一擲!


「行っっっっっけぇぇぇぇぇ~!!!!!」
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