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第2章 聖女と聖獣
第35話 悪夢
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リシャールがエインツの町に向けて旅立った日の夜、セイラは不思議な夢を見ていた。
夢の中のセイラは見慣れない変わった服を着ている。白い小袖に緋袴を身に付けたその姿は『巫女装束』と言うらしい。
セイラは『梓巫女』と呼ばれる神職に就いているらしく、弓を使って魔を祓ったり、託宣という神の啓示を受けて人々を導いたりしているそうだ。
(なんだかカッコイイな! ってか私、夢の中でも弓を使ってるんだな。なんか弓を構える姿も様になってんな~ むしろ私より似合ってる!? いやいや私だって捨てたもんじゃねぇっての!)
(おや? 夢の中の私、男の人と一緒に居るな。誰だろ? 顔は良く見えねぇけど、背は高そうだな。なんとなく見覚えあるような無いような!?)
(ぬおぅ~! 抱き合ってるぅ~! 恋人同士なんだな! ラブラブ~♪ あ、ヤバい。これ以上は見ちゃいけないんじゃね!? なんて言っても私、まだ子供だし~)
(あれ? なんか二人の前に黒い固まりが!? あ、危ないっ! 避けろっ! あぁ、男の人が呑み込まれて、次は私が嫌だ誰か助けて...イヤァァァ!!!)
悲鳴を上げてセイラは飛び起きた、というより自分の悲鳴で目が覚めた。余程怖かったのだろう、涙が止めどなくポロポロと零れ落ちる。体中汗をびっしょりと掻いている。気持ち悪い...
心臓は早鐘のようにバクバクと鳴っていた。
(なんだったんだ!? あれは夢!? それとも...)
セイラは思わず自分で自分の体を抱き締めた。汗で濡れたナイトウェアが夜気に触れ冷たく肌に張り付く。ブルブルと体の震えが止まらない。寒い...
(怖い...良く分からないけど、アレはきっと良く無いモノだ)
眠れなくなったのでベランダから外を見る。すると月明かりの下、茂みの中に黒い影が目に映る。
「あれは...トカゲ!? あんな所で何やってんだ!?」
クロウは微動だにせず、ずっと北の方を見つめている。東の空が白み始めて来たので、夜明けが近い。肌寒い風が濡れた体を冷やし、セイラはまた身震いした。
「あいつ昨日から何か変だよな。メシも全然食わねぇし」
そうなのだ。あれだけ大食漢だったのが嘘のように、昨日から何も口にしない。起きてる間はずっとこのように北の方を見続けている。まるで今にも飛び立ちそうだ。
「もしかして、何か心配しているのか?」
見てる方向にあるのはエインツの町だ。やはり何か良くないことが起こってるのだろうか? そう思いながらセイラも同じ方向へ目を向けた。
夢の中のセイラは見慣れない変わった服を着ている。白い小袖に緋袴を身に付けたその姿は『巫女装束』と言うらしい。
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(おや? 夢の中の私、男の人と一緒に居るな。誰だろ? 顔は良く見えねぇけど、背は高そうだな。なんとなく見覚えあるような無いような!?)
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悲鳴を上げてセイラは飛び起きた、というより自分の悲鳴で目が覚めた。余程怖かったのだろう、涙が止めどなくポロポロと零れ落ちる。体中汗をびっしょりと掻いている。気持ち悪い...
心臓は早鐘のようにバクバクと鳴っていた。
(なんだったんだ!? あれは夢!? それとも...)
セイラは思わず自分で自分の体を抱き締めた。汗で濡れたナイトウェアが夜気に触れ冷たく肌に張り付く。ブルブルと体の震えが止まらない。寒い...
(怖い...良く分からないけど、アレはきっと良く無いモノだ)
眠れなくなったのでベランダから外を見る。すると月明かりの下、茂みの中に黒い影が目に映る。
「あれは...トカゲ!? あんな所で何やってんだ!?」
クロウは微動だにせず、ずっと北の方を見つめている。東の空が白み始めて来たので、夜明けが近い。肌寒い風が濡れた体を冷やし、セイラはまた身震いした。
「あいつ昨日から何か変だよな。メシも全然食わねぇし」
そうなのだ。あれだけ大食漢だったのが嘘のように、昨日から何も口にしない。起きてる間はずっとこのように北の方を見続けている。まるで今にも飛び立ちそうだ。
「もしかして、何か心配しているのか?」
見てる方向にあるのはエインツの町だ。やはり何か良くないことが起こってるのだろうか? そう思いながらセイラも同じ方向へ目を向けた。
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