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第2章 聖女と聖獣
第28話 警告
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式典が終わってゴドウィンの部屋に戻ろうとしたリシャールは、
「えっ!? セイラが居なくなった!?」
「は、はい、気が付いた時にはどこにも...」
申し訳なさそうにしている若い神官から報告を受けて、ハァッ...とため息を吐いた。まぁセイラが大人しく言うことを聞く訳もないか...と半ば諦観した。
リシャールは新しくなったタチアナの部屋に向かった。その部屋は以前の倍の広さがあり、これならペット? と一緒でも不自由なく過ごせそうだ。
リシャールは部屋を見渡し、アレが中に居ないことを真っ先に確認した。
「えっとその...アレは?」
「アレ?」
セイラはキョトンとしている。
「ほらあの噛み癖のある...」
「あぁ、クロウのことですか~?」
「クロウ?」
「はい~、名前が無いと不便なので付けました~」
「.. 黒いから?」
だとすればなんて安易な命名基準...
「それもありますけど~ 最初見た時、鳥かな? 黒いからカラスかな? って思ったからですかね~」
「あぁ、なるほど。それでクロウね」
「クロウに会いに来たんですか~?」
「あぁ、いやいや、そういう訳じゃないんだ。それはそれとして、そのクロウは今どこに?」
「菜園で食事をさせています~」
「アイツ、まだ食べるのか...」
さっきあれだけ食ったのに...
「色々食べさせてみようと思ったんですが、肉、魚、卵、といった動物性タンパク質は一切口にしないんですよ~」
「へ、へぇ~それはまた...」
本当にベジタリアンかよ...見た目詐欺にも程があるだろ...
「仕方無いからシスターに菜園に連れて行って貰ってます~ 私も着替えてこれから行く所だったんですが、一緒に行きます~?」
リシャールが答える前に部屋のドアがノックも無しに開いた。
「リシャール、ここに居たか」
「セイラ!? お前な、どこにも行くなってあれ程」
「話がある。ゴドウィンの爺さんの部屋に一緒に来てくれ」
リシャールの苦言を遮ってセイラが告げる。いつになく表情が固い。
「...分かった...」
「あ、あの、私は!?」
「タチアナ、お前は来なくていい。ここで待ってろ」
「は、はい...」
リシャールとタチアナの名前を茶化すことなく普通に言った。それだけでセイラの真剣さが伝わったタチアナは素直に引き下がった。
◇◇◇
「それでセイラ様、お話とは!?」
「爺さん、その前に人払いしてくれ」
セイラの様子に何かを感じ取ったのか、ゴドウィンも素直に従った。お茶を運んで来たシスターと側付きの若い神官を下がらせる。それを見送った後、徐にセイラが告げた。
「悪いことは言わねぇ、あのトカゲはさっさと始末すべきだ」
「えっ!? セイラが居なくなった!?」
「は、はい、気が付いた時にはどこにも...」
申し訳なさそうにしている若い神官から報告を受けて、ハァッ...とため息を吐いた。まぁセイラが大人しく言うことを聞く訳もないか...と半ば諦観した。
リシャールは新しくなったタチアナの部屋に向かった。その部屋は以前の倍の広さがあり、これならペット? と一緒でも不自由なく過ごせそうだ。
リシャールは部屋を見渡し、アレが中に居ないことを真っ先に確認した。
「えっとその...アレは?」
「アレ?」
セイラはキョトンとしている。
「ほらあの噛み癖のある...」
「あぁ、クロウのことですか~?」
「クロウ?」
「はい~、名前が無いと不便なので付けました~」
「.. 黒いから?」
だとすればなんて安易な命名基準...
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「あぁ、なるほど。それでクロウね」
「クロウに会いに来たんですか~?」
「あぁ、いやいや、そういう訳じゃないんだ。それはそれとして、そのクロウは今どこに?」
「菜園で食事をさせています~」
「アイツ、まだ食べるのか...」
さっきあれだけ食ったのに...
「色々食べさせてみようと思ったんですが、肉、魚、卵、といった動物性タンパク質は一切口にしないんですよ~」
「へ、へぇ~それはまた...」
本当にベジタリアンかよ...見た目詐欺にも程があるだろ...
「仕方無いからシスターに菜園に連れて行って貰ってます~ 私も着替えてこれから行く所だったんですが、一緒に行きます~?」
リシャールが答える前に部屋のドアがノックも無しに開いた。
「リシャール、ここに居たか」
「セイラ!? お前な、どこにも行くなってあれ程」
「話がある。ゴドウィンの爺さんの部屋に一緒に来てくれ」
リシャールの苦言を遮ってセイラが告げる。いつになく表情が固い。
「...分かった...」
「あ、あの、私は!?」
「タチアナ、お前は来なくていい。ここで待ってろ」
「は、はい...」
リシャールとタチアナの名前を茶化すことなく普通に言った。それだけでセイラの真剣さが伝わったタチアナは素直に引き下がった。
◇◇◇
「それでセイラ様、お話とは!?」
「爺さん、その前に人払いしてくれ」
セイラの様子に何かを感じ取ったのか、ゴドウィンも素直に従った。お茶を運んで来たシスターと側付きの若い神官を下がらせる。それを見送った後、徐にセイラが告げた。
「悪いことは言わねぇ、あのトカゲはさっさと始末すべきだ」
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