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第1章 聖女誕生
第18話 伝説の秘薬
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「え、エリクサー!? あの万能薬と呼ばれる!?」
ゴドウィンの声が上擦る。若い神官は興奮が隠し切れない。
「はい、伝説の大賢者しか作ることが出来ないと言われている幻の秘薬です! 一口飲むだけで瀕死の重傷患者を瞬く間に回復させ、あらゆる病に侵された人々を立ち所に完治させてしまう、正に神の神業としか思えない奇跡の神薬なのです!」
再び部屋中がどよめき出す。リシャールも驚愕していた。
「リシャール殿下、これはセイラ様に是非とも説明して頂きたいと思います。もう一度お呼びしてもよろしいでしょうか?」
ゴドウィンの問い掛けに、リシャールは即答する。
「えぇ、僕が呼びに行きます!」
リシャールはセイラの控え室に急いだ。
「セイラ! 開けてくれ! 話があるんだ!」
ドアをノックしても、呼び掛けても返事が無い。イヤな予感がしてドアを開けると、
「セイラ!? どこに行った!?」
控え室はもぬけの殻だった。
◇◇◇
「おっちゃん、これとこれ、あとそれも頂戴♪」
「はいよ、毎度ありぃ!」
神殿が大騒ぎになっている頃、セイラは屋台で買い食いしていた。堅苦しい儀式のせいで腹が減ったのだ。王宮での豪華な食事より、こっちの方がセイラは肩が凝らなくて楽だった。
「ん~♪ おいひ~♪」
幸せそうに肉をパクつくセイラの耳に、
「泥棒だ! 誰か捕まえてくれ!」
という叫びが聞こえて来た。見ると浮浪児だろうか? みすぼらしい格好をした7、8歳くらいの男の子がこっちに向かって走って来る。
だが途中で、足が縺れたのか転んでしまった。そこへ、盗まれた店の主らしい男が追い付いて、
「このクソガキ! 今日という今日は許さねぇ! ぶっ殺してやる!」
手にしていた棒で男の子を殴ろうとした。
「止めろ!」
思わすセイラが割って入る。
「んだてめぇ! このガキの仲間か!?」
「違う! だが理不尽な暴力は見逃せねぇ! この子を殺そうとしたな!?」
「ハンッ! 当然だ! このガキは俺の店の商品を盗んだんだからな! こんなガキは死んだ方が世のため人のためなんだよ!」
「ふっざけんな! てめぇが死ね!」
「ごふぅ...」
セイラに股間を蹴り上げられた男がその場に崩れ落ちる。
「おい、怪我はないか!?」
セイラが男の子に話し掛ける。
「う、うん、大丈夫...あ、あの、助けてくれてありがと...」
男の子が戸惑いながら答える。
「いいってことよ! 気にすんな!」
セイラは良い笑顔で答えた。と、そこへ、
「なんの騒ぎだ! 」
騒ぎを聞き付けて衛兵がやって来た。
「ヤバい! 逃げるぞ!」
「えっ!? えっ!?」
セイラは男の子を抱えるようにして、その場から離れた。
ゴドウィンの声が上擦る。若い神官は興奮が隠し切れない。
「はい、伝説の大賢者しか作ることが出来ないと言われている幻の秘薬です! 一口飲むだけで瀕死の重傷患者を瞬く間に回復させ、あらゆる病に侵された人々を立ち所に完治させてしまう、正に神の神業としか思えない奇跡の神薬なのです!」
再び部屋中がどよめき出す。リシャールも驚愕していた。
「リシャール殿下、これはセイラ様に是非とも説明して頂きたいと思います。もう一度お呼びしてもよろしいでしょうか?」
ゴドウィンの問い掛けに、リシャールは即答する。
「えぇ、僕が呼びに行きます!」
リシャールはセイラの控え室に急いだ。
「セイラ! 開けてくれ! 話があるんだ!」
ドアをノックしても、呼び掛けても返事が無い。イヤな予感がしてドアを開けると、
「セイラ!? どこに行った!?」
控え室はもぬけの殻だった。
◇◇◇
「おっちゃん、これとこれ、あとそれも頂戴♪」
「はいよ、毎度ありぃ!」
神殿が大騒ぎになっている頃、セイラは屋台で買い食いしていた。堅苦しい儀式のせいで腹が減ったのだ。王宮での豪華な食事より、こっちの方がセイラは肩が凝らなくて楽だった。
「ん~♪ おいひ~♪」
幸せそうに肉をパクつくセイラの耳に、
「泥棒だ! 誰か捕まえてくれ!」
という叫びが聞こえて来た。見ると浮浪児だろうか? みすぼらしい格好をした7、8歳くらいの男の子がこっちに向かって走って来る。
だが途中で、足が縺れたのか転んでしまった。そこへ、盗まれた店の主らしい男が追い付いて、
「このクソガキ! 今日という今日は許さねぇ! ぶっ殺してやる!」
手にしていた棒で男の子を殴ろうとした。
「止めろ!」
思わすセイラが割って入る。
「んだてめぇ! このガキの仲間か!?」
「違う! だが理不尽な暴力は見逃せねぇ! この子を殺そうとしたな!?」
「ハンッ! 当然だ! このガキは俺の店の商品を盗んだんだからな! こんなガキは死んだ方が世のため人のためなんだよ!」
「ふっざけんな! てめぇが死ね!」
「ごふぅ...」
セイラに股間を蹴り上げられた男がその場に崩れ落ちる。
「おい、怪我はないか!?」
セイラが男の子に話し掛ける。
「う、うん、大丈夫...あ、あの、助けてくれてありがと...」
男の子が戸惑いながら答える。
「いいってことよ! 気にすんな!」
セイラは良い笑顔で答えた。と、そこへ、
「なんの騒ぎだ! 」
騒ぎを聞き付けて衛兵がやって来た。
「ヤバい! 逃げるぞ!」
「えっ!? えっ!?」
セイラは男の子を抱えるようにして、その場から離れた。
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