絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

文字の大きさ
上 下
63 / 130

第63話 ユグドラシルの枝

しおりを挟む
「うん? あれはもしかしたら...」

 ラキがワンダートレントの亡骸に近寄って何かを探している。やがて、

「おぉっ! これは! 間違いない『ユグドラシルの枝』じゃ!」

 そう言って真っ黒な木刀のようなモノを掲げる。

「ユグドラシルの枝ってなんだ?」

 ユウが至極もっともな疑問を口にする。

「世界樹と呼ばれ、この世界を支えていると言われる巨大な樹の一部じゃ。お主が下げておる安っぽい剣なんぞより、よっぽど頼りになる得物じゃぞ? メチャクチャ硬いらしいからの」

「そうなのか?」

「なにせ滅多にドロップしない希少なアイテムじゃからな。売ってもいいが、それよりも実戦で使ってみてはどうじゃ? 伝説の武器になるかも知れんぞ?」

 そう言われると、ユウの中にある少年の心が擽られる。

「ラキがそこまで言うなら、やってみようかな」

 ユウは満更でもない顔で、いそいそとユグドラシルの枝を腰に下げた。元々あった剣はラキに渡した。

「軽いな。本当にそんな強い武器なのかな...」

 装備したものの、ユウは半信半疑みたいだ。

「試してみれば良い。ほれ、ちょうどいい相手がやって来たじゃろ?」

 ラキが指差す先に居たのは、そこそこ大きく育ったトレントだった。幹回りは約5m程、高さは約20m程だろうか。十分大木と呼べるレベルである。

「ブロゥゥゥッ!」 

 トレントは長い根と枝を伸ばして攻撃して来た。

「うおっと!?」

 ユウは慌ててバリヤを張る。

「ユウ、守ってばかりいたんでは、武器の真価を発揮できんぞ?」

「そ、そう言われても!」

「ほれ! 今じゃ! ヤツの懐に飛び込め!」

 根と枝を攻撃を見切り、ユウの背中を押しながらラキが指示を下す。

「ウオォォォッ!」

 ユウがヤケクソとばかりに、トレントの懐に飛び込んでユグドラシルの枝を振る。

「ブロゥゥゥッ!」 

 なんと! 一撃でトレントが両断された!

「凄い...」

 ユウはユグドラシルの枝を振った体勢のまま固まった。

「フムフム、さすがの威力じゃの」

 ラキは一人満足そうに頷いた。 

「あんな太い木を一振りで...」

『ビックリだね...』

 アリィとリオは只只驚いていた。

「ユウ、どうせ夜まで戻れんのじゃから、しばらくこの森で試し斬りしてはどうじゃ?」

「あ、あぁ、やってみるよ」

 少し自信が付いたユウは、それから夜になるまでオークやホーンラビット、ゴブリンやコボルトなどを相手に戦った。

「ラキ! 確かにこれはめっちゃ強い! 伝説の武器と呼ばれるのも納得だ!」

 ユウは大ハシャギである。ラキ達はそんなユウを温かい目で見守っていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

処理中です...