絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

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第50話 雨天休業

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「それじゃあ、ラキ。他に質問したいことはあるか? 主にこの家に関することについてとか」

 ユウがラキに尋ねる。

「あぁ、色々と聞いてみたいことはあるが、まずはこの場所を移動してからにした方が良かろう」

 そう言ってラキは立ち上がった。
 
「えっ!? なんで!?...って、そうか! 昨夜の盗賊どもが戻って来るかも知れないってことか!」

 一瞬、訝しんだユウだったが、すぐに得心が行ったようだ。

「そういうことじゃ。この場所は安全とは言えんからの」

「確かに。この家の中にお宝があると思ってるみたいな言い方してましたね...」

 思い出したのか、アリィがブルッと身を震わせる。

「なるほどな、分かった。移動しよう」

「オッケー!」

 リオが元気一杯に応じた。全員が家の外に出たところで、アリィがサッと家を消す。それを目の当たりにしたラキがビックリする。 

「こりゃたまげた...一瞬で消えるんじゃな...出す時も一瞬なのか?」

「えぇ、まあ...」

「大した魔法じゃな...」

 ユウやアリィにとってみたら、ラキやリオが姿を変える方がよっぽど凄いと思うのだが、隣の芝生は青く見えるということなのだろう。

「少し急ぐか。一雨来そうだ」

 そう言ってユウは空を見上げる。厚い雲が垂れ込めて来ていた。 
 
「うん、確かに雨が降りそうだね」

 リオが鼻をヒクヒクさせながらそう言った。 


◇◇◇


 しばらく歩くと、森の中に良さそうな開けた場所を見付けた。

「この辺りでいいんじゃないか?」

 ユウがそう言った時、ちょうど雨が降り出した。すかさずアリィが家を出す。

「ふぅ...ギリギリセーフだったね!」

 リオが破顔する。

「こりゃしばらく止みそうにないの」

 ラキが窓から外を見ながらそう言った。あっという間に外はどしゃ降りになっていた。 

「凄い雨だな...」

 異世界に来てからしばらく経つが、思えば雨に降られるのは初めてかも知れない。 

「この辺りはこれから雨季に入るからの。雨が多くなるぞ」

「そうなのか...この降りじゃ今夜出発するのは無理そうだな...」

「急ぐ旅でもなし、1日くらい休んでも罰は当たらんじゃろ」

「そうだな。夜まで待ってこのままならそうしよう」
 
 結局、雨が止むことはなく、ユウ達はこの日の出発を諦めた。その後、ラキは家のことに関してユウとアリィを質問攻めにした。その間、リオは1人で大人しく絵本を読んでいた。

 ある程度質問が済んだころで、今度はラキのことを聞く番になった。

「で? 結局のところラキは今、何歳くらいになるんだ?」

 一番聞きたいことだった。

「千歳を超えたところで数えるのを止めたからのぅ。それからまだ千年は経ってないと思うから、千何百歳といったところかの」

 いきなり凄い数字が出て来た。

「そ、そうなんだ...なんていうかその...スケールの大きな話だな...」

「竜人とはそんなもんじゃよ。妾などまだまだ小童じゃ。里の長老辺りになると何万歳ではきかんじゃろうからなぁ」

「......」

 ユウ達はもう言葉もなかった。

「ねぇねぇ、竜人の里ってどの辺りにあるの?」

 そんな中、リオが無邪気に尋ねる。

「詳しい場所は明かせんが、そうだな...空を飛べないと行けない場所にあるとだけ言っておこうかの」

「それじゃ竜人にしか行けない場所なんだね~」

「そうでもないぞ? 昔は鳥の獣人が良く訪れたと聞く」

「そうなんだね~」

 そこでユウが口を挟む。

「リオ、鳥の獣人ってのも居るんだな?」

「物凄く数が少ないみたいだけど居るんだってお父さんが言ってた。リオの住んでた村には居なかったから、見たことないんだけどね~」
 
「そうなんだ...」

 空を飛べる鳥の獣人か。一度くらいは見てみたいなとユウは思った。
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