絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

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第38話 必死の治療

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 リオが咥えて来た少女は酷い状態だった。

 両腕と両足に深い裂傷を負い、脇腹が抉れてしまっている。出血は止めどなく溢れ、血溜まりが出来ている。

「うっ! こ、これは...」

「ひいっ! あわわわ...」

 応急処置の域を軽く超えてる...これはお手上げじゃないか? そうは思いながらもユウは、

「アリィ! 血止め薬と消毒薬を沢山出してくれ! あと包帯も!」

「おぇ...うぇ...わ、分かりました...」

 出来るだけのことをしようと思った。大量の出血を目の当たりにして、嘔吐きながらもアリィは、ユウに言われたモノを出して行く。

「まずは一番酷い脇腹だな。滲みるだろうけど辛抱しろよ」

 そう言ってユウは、少女の脇腹の傷に消毒薬と血止め薬をぶっかける。少女は死んだように反応がない。

「...なんとか出血は止まったようだが、問題は内臓が傷付いているかどうかだな。内臓がやられてたらどうにもならん...アリィ、包帯を巻くから手を貸してくれ...アリィ!?」

「おぇぇぇっ!」

 アリィは吐いていた。無理もない。寧ろ今まで良く頑張った方だろう。

「リオが手伝うよ!」

 いつの間にか変身を解いたリオが居た。しかしその姿は...全裸に返り血を浴びた状態という、とてもスプラッタな様子だった。だが構っている暇はない。

「良し! 包帯を巻いて行くから、そっと体を持ち上げてくれ!」

「分かった!」

 こうしてどうにか脇腹の治療を終えた。その頃にはアリィが復活した。まだ真っ青な顔をしているが、リオの体を拭いて上げている。

「次は...足だな」

 両足の太腿に裂傷がある。ただ既に出血は止まりつつある。幸いなことに動脈は傷付いていなかったようだ。消毒薬と血止め薬を軽く掛けて包帯を巻く。

「リオ、また手伝ってくれ」

「わ、私がやります!」

「アリィ、無理しなくても...」

「大丈夫てす!」

 こうして両足の治療も終えた。最後に残ったのは両腕だが、こちらは既に出血が止まっているようだ。

「両腕は消毒薬だけで良さそうだな。後は包帯を巻いてと。良し。取り敢えず終わったな」

 そう言ってユウは額の汗を拭った。

「お疲れ様でした」 

「ユウ、助けてくれてありがとう!」

「二人ともお疲れ様。いや、まだ助かったかどうかは何とも言えないけどな」
 
「でも見て下さい。安らかな寝顔ですよ?」

 そう言われてユウは、初めて少女の顔をまじまじと見た。頭に親指ほどの小さな角が二本生えている。銀色に輝く長い髪は腰まで伸びている。そしてまだ幼さの残る顔立ちは怖いくらいに整っている。美幼女という言葉がしっくりきそうだ。美幼女は確かに穏やかな寝息を立てている。

「確かにそうだな。アリィ、フトンを出してくれないか? 草の上に寝せておくのも可哀想だ」

「分かりました」

 フトンの上に少女をそっと寝かせて、三人はやっと一息吐いた。

「しばらくはここで様子見だな」

「そうですね」

「リオ、お腹空いた!」

「あぁ、フェンリルの姿になったもんな。それじゃ仕方ない。アリィ、レジャーシートを出してくれ。あの娘が起きるまで、ピクニックでもしていよう」

「賛成です!」

「やった~♪」 

 
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