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第36話 ドラゴン再々襲来
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夜営地に選んだ場所は、ベントの町から歩いて30分ほど掛かる所で、ちょっとした林を抜けた先に、ただっ広い草原が広がっていた。
「ここなら街道から見えないし広いし申し分ないな」
「はい、では家を出しますね」
アリィが家を出すと、真っ先にユウが家の中に飛び込んだ。
「ユウ、どうしました?」
アリィが訝しんで尋ねる。
「あぁ、良かった。ちゃんと本があった」
ユウがホッとした表情を見せる。
「どういう意味です?」
「いや、ちょっとだけ心配だったんだよ。アリィが家を消してまた出す時、初期状態にリセットされちゃうんじゃないかって」
アリィは首を少し捻って考えた後、得心が行ったのか大きく頷いた。
「あぁ! そういうことですか! 私もそこまでは考えてなかったです!」
「だろ? もしリセットされてたら、せっかく苦労して運んだ本が消えちゃうかもと思ってさ。いやぁ、杞憂に終わって良かったよ~」
「ですね」
アリィが苦笑で答える。
「ねぇ! リオ、お腹空いちゃったよ! 早くなんか食べようよ!」
二人の話に付いて行けなかったリオが不満げに訴える。
「そうだな。俺も腹減った。メシにしよう」
「そうですね。今日はなに食べます?」
「ハンバーグ!」
「はいはい」
その日の夜は昼間の疲れがあったせいか、せっかく買った本を読むこともなく、食事と風呂を済ませた3人は、朝まで泥のように眠った。
3人が寝静まった頃、家の周りを蠢く不審な影があったが、そのことに3人の内、誰1人として気付く者はいなかった。
◇◇◇
「ふわ~あ、あぁ、良く寝た」
「おはようございます。私も昨夜はグッスリでした」
「リオも~!」
「今日はどうします?」
「もう一度町に行ってみたい。今度は買い物じゃなくて情報収集したい」
「情報ですか?」
「そう、今後の方針っていうか進路を決めるための情報」
「なるほど、分かりました」
「リオも分かった~!」
朝食を終え家出る。アリィが家を消して町に戻ろうとした時だった。
「グオォォォォッーーーーー!!!」
三度轟くあの咆哮。朝の光を浴び銀色に輝く巨体。またしてもドラゴンが襲って来た。
「クソッ! またまたアイツか! リオ、アリィ、俺から離れるなよ!」
「「 はいっ! 」」
ユウがバリヤを展開して臨戦態勢に入った...のだが、ドラゴンの様子が今までと違うことに気付いた。ブレスを吐いて来ないし、大岩を抱えてもいない。そもそも攻撃するという意志を感じない。
「なんだ!? なにを企んでやがる!?」
ドラゴンの意図が読めないので、どう動くべきか判断に迷う。するとドラゴンはゆっくりと低空飛行で近付いて来た。それに反応してユウ達もゆっくりと後退る。
しばらくの間、そんな駆け引きが続いた。ドラゴンが前進した分、ユウ達が後退する。まるでどこかに誘導しているかのように...そしてある地点に差し掛かった時、気のせいかドラゴンが嗤ったように見えた。
...だが特に何も起こらない。すると今度は明らかにドラゴンが首を捻った。なんか人間臭い動きだなと思いながら、ユウ達は更に後退してその場を離れた。
ドラゴンが地上に降りた。ユウ達に見向きもしないで、さっきの地点に近付いた。そして...
「グオォッ!?」
穴に落ちた。
「なあるほど、今度は落とし穴を作って、そこに俺達を落とそうとした訳か。だからあの妙な動きで俺達を誘導しようとしたと。考えたもんだ。中々やるじゃないか。もっとも、その落とし穴に自分で落ちてりゃ世話ないが」
「あの...なんで私達は落ちなかったんでしょうか?」
アリィの疑問はもっともだ。
「ん~...ドラゴン仕様で作ったから、俺達の重さ程度じゃ発動しなかったのか、あるいは...」
「あるいは?」
「このバリヤは罠無効の効果も付いてるとか」
「そうだとしたら凄いですね...」
アリィが瞠目する。するとリオが、
「ねぇ、あのドラゴン登って来ないよ?」
「翼があるんだから飛んで来れるだろ?」
「そうだけど...なんか様子が変だよ? 見に行っていい?」
走り出そうとするリオを慌てて止める。
「待て待て。俺達が見に行くのを待ち構えているのかも知れん。俺が行ってそっと覗いて来るからここで待ってろ」
ユウはそっと穴に近付き慎重に中を覗いた。するとそこには...
「ここなら街道から見えないし広いし申し分ないな」
「はい、では家を出しますね」
アリィが家を出すと、真っ先にユウが家の中に飛び込んだ。
「ユウ、どうしました?」
アリィが訝しんで尋ねる。
「あぁ、良かった。ちゃんと本があった」
ユウがホッとした表情を見せる。
「どういう意味です?」
「いや、ちょっとだけ心配だったんだよ。アリィが家を消してまた出す時、初期状態にリセットされちゃうんじゃないかって」
アリィは首を少し捻って考えた後、得心が行ったのか大きく頷いた。
「あぁ! そういうことですか! 私もそこまでは考えてなかったです!」
「だろ? もしリセットされてたら、せっかく苦労して運んだ本が消えちゃうかもと思ってさ。いやぁ、杞憂に終わって良かったよ~」
「ですね」
アリィが苦笑で答える。
「ねぇ! リオ、お腹空いちゃったよ! 早くなんか食べようよ!」
二人の話に付いて行けなかったリオが不満げに訴える。
「そうだな。俺も腹減った。メシにしよう」
「そうですね。今日はなに食べます?」
「ハンバーグ!」
「はいはい」
その日の夜は昼間の疲れがあったせいか、せっかく買った本を読むこともなく、食事と風呂を済ませた3人は、朝まで泥のように眠った。
3人が寝静まった頃、家の周りを蠢く不審な影があったが、そのことに3人の内、誰1人として気付く者はいなかった。
◇◇◇
「ふわ~あ、あぁ、良く寝た」
「おはようございます。私も昨夜はグッスリでした」
「リオも~!」
「今日はどうします?」
「もう一度町に行ってみたい。今度は買い物じゃなくて情報収集したい」
「情報ですか?」
「そう、今後の方針っていうか進路を決めるための情報」
「なるほど、分かりました」
「リオも分かった~!」
朝食を終え家出る。アリィが家を消して町に戻ろうとした時だった。
「グオォォォォッーーーーー!!!」
三度轟くあの咆哮。朝の光を浴び銀色に輝く巨体。またしてもドラゴンが襲って来た。
「クソッ! またまたアイツか! リオ、アリィ、俺から離れるなよ!」
「「 はいっ! 」」
ユウがバリヤを展開して臨戦態勢に入った...のだが、ドラゴンの様子が今までと違うことに気付いた。ブレスを吐いて来ないし、大岩を抱えてもいない。そもそも攻撃するという意志を感じない。
「なんだ!? なにを企んでやがる!?」
ドラゴンの意図が読めないので、どう動くべきか判断に迷う。するとドラゴンはゆっくりと低空飛行で近付いて来た。それに反応してユウ達もゆっくりと後退る。
しばらくの間、そんな駆け引きが続いた。ドラゴンが前進した分、ユウ達が後退する。まるでどこかに誘導しているかのように...そしてある地点に差し掛かった時、気のせいかドラゴンが嗤ったように見えた。
...だが特に何も起こらない。すると今度は明らかにドラゴンが首を捻った。なんか人間臭い動きだなと思いながら、ユウ達は更に後退してその場を離れた。
ドラゴンが地上に降りた。ユウ達に見向きもしないで、さっきの地点に近付いた。そして...
「グオォッ!?」
穴に落ちた。
「なあるほど、今度は落とし穴を作って、そこに俺達を落とそうとした訳か。だからあの妙な動きで俺達を誘導しようとしたと。考えたもんだ。中々やるじゃないか。もっとも、その落とし穴に自分で落ちてりゃ世話ないが」
「あの...なんで私達は落ちなかったんでしょうか?」
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「ん~...ドラゴン仕様で作ったから、俺達の重さ程度じゃ発動しなかったのか、あるいは...」
「あるいは?」
「このバリヤは罠無効の効果も付いてるとか」
「そうだとしたら凄いですね...」
アリィが瞠目する。するとリオが、
「ねぇ、あのドラゴン登って来ないよ?」
「翼があるんだから飛んで来れるだろ?」
「そうだけど...なんか様子が変だよ? 見に行っていい?」
走り出そうとするリオを慌てて止める。
「待て待て。俺達が見に行くのを待ち構えているのかも知れん。俺が行ってそっと覗いて来るからここで待ってろ」
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