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こっちの世界のガーデンパーティーは、前世日本のそれとあまり大差はなかった。招待された連中が所謂セレブであることを除けば、良く見る立食形式のパーティーとなんら変わらない。
母親はカクテルを、未成年の私はモクテルを片手に会場中を見渡していると、すぐにとある異変に気付いた。
会場中のあちらこちらから『ジークフリート王子のここが凄い』とか『ジークフリート王子こそが王の器に相応しい』とか、とにかくジークフリート王子のことを持ち上げる発言が相次いで聞こえて来た。
「お母様...これって...」
私は母親は耳元で囁いた。
「気付いた?」
「えぇ、まるで『ジークフリート教』の教徒の集まりみたいな...」
「ウフフ♪ 言い得て妙ね♪ でもまぁ、強ち間違っちゃいないかも知れないわ。なにせ今日、ここに集められた連中のほとんどは、所謂デートリッヒ一派っていう派閥の構成員なんだから」
「派閥...ですか...」
前世日本でもお馴染みの言葉だ。当然ながら、こっちの世界でも派閥争いとかあるんだろうね。
『ジークフリート王子が王妃様の不興を買ったことで、後継者争いから一歩後退してしまったぞ! このままじゃマズい! なんとかしなければ! そうだ、こんな時こそ派閥の結束力が試される! 良し! 決起集会を開くぞ! 我々まだ終わってない! 諦めたらそこでゲームセットなんだ! 今やらないでいつやるっていうんだ! 諦めんな諦めんなよ!』
「と、まぁこんな感じなんでしょうね」
「な、なるほど...」
臨場感たっぷりな母親の説明に、私は舌を巻くしかなかった。ところで母親よ、所々に前世日本の有名なセリフが混ざってるように感じたのは私の気のせいか?
ともあれ、今回のガーデンパーティーの趣旨は理解した。次に疑問に思ったのは、そんな場に私達が招かれた理由についてなんだが、
「派閥の構成員だけじゃ華やかさに欠けるから、私達のように派閥外の者も何人か呼んでるみたいね」
聞こうとする前に母親が説明してくれた。
「つまり私達は、お祝いのために贈られた花輪みたいな存在ってことですか...」
パチンコ屋の開店の時なんかに飾られるアレのことね。あ、今だとフラワースタンドになるのかな? 略してフラスタっていう呼び方するんだっけか?
「アハハ♪ これまた言い得て妙ね♪ リーチェ、あなたって本当にセンスが良いわぁ~♪ さすがは私の娘ね♪ 素晴らしいわぁ~♪」
「お褒めに預かり光栄の至り...」
どうでもいいが母親よ、それって間接的に自分のことを褒めてねぇか?
母親はカクテルを、未成年の私はモクテルを片手に会場中を見渡していると、すぐにとある異変に気付いた。
会場中のあちらこちらから『ジークフリート王子のここが凄い』とか『ジークフリート王子こそが王の器に相応しい』とか、とにかくジークフリート王子のことを持ち上げる発言が相次いで聞こえて来た。
「お母様...これって...」
私は母親は耳元で囁いた。
「気付いた?」
「えぇ、まるで『ジークフリート教』の教徒の集まりみたいな...」
「ウフフ♪ 言い得て妙ね♪ でもまぁ、強ち間違っちゃいないかも知れないわ。なにせ今日、ここに集められた連中のほとんどは、所謂デートリッヒ一派っていう派閥の構成員なんだから」
「派閥...ですか...」
前世日本でもお馴染みの言葉だ。当然ながら、こっちの世界でも派閥争いとかあるんだろうね。
『ジークフリート王子が王妃様の不興を買ったことで、後継者争いから一歩後退してしまったぞ! このままじゃマズい! なんとかしなければ! そうだ、こんな時こそ派閥の結束力が試される! 良し! 決起集会を開くぞ! 我々まだ終わってない! 諦めたらそこでゲームセットなんだ! 今やらないでいつやるっていうんだ! 諦めんな諦めんなよ!』
「と、まぁこんな感じなんでしょうね」
「な、なるほど...」
臨場感たっぷりな母親の説明に、私は舌を巻くしかなかった。ところで母親よ、所々に前世日本の有名なセリフが混ざってるように感じたのは私の気のせいか?
ともあれ、今回のガーデンパーティーの趣旨は理解した。次に疑問に思ったのは、そんな場に私達が招かれた理由についてなんだが、
「派閥の構成員だけじゃ華やかさに欠けるから、私達のように派閥外の者も何人か呼んでるみたいね」
聞こうとする前に母親が説明してくれた。
「つまり私達は、お祝いのために贈られた花輪みたいな存在ってことですか...」
パチンコ屋の開店の時なんかに飾られるアレのことね。あ、今だとフラワースタンドになるのかな? 略してフラスタっていう呼び方するんだっけか?
「アハハ♪ これまた言い得て妙ね♪ リーチェ、あなたって本当にセンスが良いわぁ~♪ さすがは私の娘ね♪ 素晴らしいわぁ~♪」
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