283 / 316
283
しおりを挟む
「わ、私ですが...あ、あのお嬢様...な、なにか不備でもごさいましたでしょうか...」
手を上げたのは小太りの中年男だった。
「料理長、この料理はお赤飯で間違いないわよね?」
「は、はい...お、おっしゃる通りでございます...」
「そんなに固くならないで? 別に咎めてる訳じゃないんだから。ね?」
私は、緊張した様子の料理長を見兼ねて笑顔を浮かべながらそう言った。
「は、はぁ...」
「聞きたいことがあるのよ。この料理の材料、つまりお米をどうやって手に入れたの?」
「それは私の方から説明させていただきます」
するとセバスチャンが説明役を買って出た。
「こちらは遥か東方に位置する島国『ジパング』から取り寄せた物になります」
「ジパング...」
おいおい! マジか! それって、マルコ・ポーロが名付けたっていう日本の別名じゃねぇか! 黄金の国『ジパング』確か東方見聞録で紹介したんだったよな!? つまりこの世界にゃ日本が実在するってことかよ!
「ねぇ、セバスチャン。その国にはどうやって行くの?」
私は興奮を隠し切れずセバスチャンに詰め寄った。
「え~と確か...我が国からだと船で三ヶ月以上は掛かるというお話でした」
「三ヶ月か...」
やっぱりそうだよね...この世界にゃ飛行機も高速船も無いんだから...そりゃそんくらい掛かっても不思議じゃないわな...
いつか行ってみたいって気はあるけど...現状だと難しいだろうな...
「でも交易自体はあるってことよね? こうやってお米が存在してるんだから」
「左様でございます。もっとも、交易が開始されたのは極最近のことですから、ご存知ない方の方が多いと思います。お嬢様は良くご存知でいらっしゃいましたね?」
「えぇ、まぁね...前に本で読んだことがあるから...」
私は曖昧に暈した。
「なるほど。お嬢様は慧眼であらせられますな。感服致しました」
「それでお米の話に戻るけど、今夜のメニューに選んだ理由はなぜ?」
「はい、聞くところによりますと、お米を赤く炊いたお赤飯という料理が、かのジパングという国ではお祝い事に欠かせないものだそうです。見た目も赤くておめでたい雰囲気も醸し出していますので、そのことを知っている貴族家の間では密かなブームになっているそうでございますよ?」
「あぁ、なるほど...それで...」
シンシアや両親がお赤飯を連呼してた理由が分かったよ。
「ねぇ、セバスチャン。ジパングと交易してるのはお米だけ? 他にもなにかあったりする?」
実はこの点が一番聞きたかった。私は期待を込めてそう尋ねた。
手を上げたのは小太りの中年男だった。
「料理長、この料理はお赤飯で間違いないわよね?」
「は、はい...お、おっしゃる通りでございます...」
「そんなに固くならないで? 別に咎めてる訳じゃないんだから。ね?」
私は、緊張した様子の料理長を見兼ねて笑顔を浮かべながらそう言った。
「は、はぁ...」
「聞きたいことがあるのよ。この料理の材料、つまりお米をどうやって手に入れたの?」
「それは私の方から説明させていただきます」
するとセバスチャンが説明役を買って出た。
「こちらは遥か東方に位置する島国『ジパング』から取り寄せた物になります」
「ジパング...」
おいおい! マジか! それって、マルコ・ポーロが名付けたっていう日本の別名じゃねぇか! 黄金の国『ジパング』確か東方見聞録で紹介したんだったよな!? つまりこの世界にゃ日本が実在するってことかよ!
「ねぇ、セバスチャン。その国にはどうやって行くの?」
私は興奮を隠し切れずセバスチャンに詰め寄った。
「え~と確か...我が国からだと船で三ヶ月以上は掛かるというお話でした」
「三ヶ月か...」
やっぱりそうだよね...この世界にゃ飛行機も高速船も無いんだから...そりゃそんくらい掛かっても不思議じゃないわな...
いつか行ってみたいって気はあるけど...現状だと難しいだろうな...
「でも交易自体はあるってことよね? こうやってお米が存在してるんだから」
「左様でございます。もっとも、交易が開始されたのは極最近のことですから、ご存知ない方の方が多いと思います。お嬢様は良くご存知でいらっしゃいましたね?」
「えぇ、まぁね...前に本で読んだことがあるから...」
私は曖昧に暈した。
「なるほど。お嬢様は慧眼であらせられますな。感服致しました」
「それでお米の話に戻るけど、今夜のメニューに選んだ理由はなぜ?」
「はい、聞くところによりますと、お米を赤く炊いたお赤飯という料理が、かのジパングという国ではお祝い事に欠かせないものだそうです。見た目も赤くておめでたい雰囲気も醸し出していますので、そのことを知っている貴族家の間では密かなブームになっているそうでございますよ?」
「あぁ、なるほど...それで...」
シンシアや両親がお赤飯を連呼してた理由が分かったよ。
「ねぇ、セバスチャン。ジパングと交易してるのはお米だけ? 他にもなにかあったりする?」
実はこの点が一番聞きたかった。私は期待を込めてそう尋ねた。
0
お気に入りに追加
2,150
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる