転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「わ、私ですが...あ、あのお嬢様...な、なにか不備でもごさいましたでしょうか...」

 手を上げたのは小太りの中年男だった。

「料理長、この料理はお赤飯で間違いないわよね?」

「は、はい...お、おっしゃる通りでございます...」

「そんなに固くならないで? 別に咎めてる訳じゃないんだから。ね?」

 私は、緊張した様子の料理長を見兼ねて笑顔を浮かべながらそう言った。

「は、はぁ...」

「聞きたいことがあるのよ。この料理の材料、つまりお米をどうやって手に入れたの?」

「それは私の方から説明させていただきます」

 するとセバスチャンが説明役を買って出た。

「こちらは遥か東方に位置する島国『ジパング』から取り寄せた物になります」

「ジパング...」

 おいおい! マジか! それって、マルコ・ポーロが名付けたっていう日本の別名じゃねぇか! 黄金の国『ジパング』確か東方見聞録で紹介したんだったよな!? つまりこの世界にゃ日本が実在するってことかよ!

「ねぇ、セバスチャン。その国にはどうやって行くの?」

 私は興奮を隠し切れずセバスチャンに詰め寄った。

「え~と確か...我が国からだと船で三ヶ月以上は掛かるというお話でした」

「三ヶ月か...」

 やっぱりそうだよね...この世界にゃ飛行機も高速船も無いんだから...そりゃそんくらい掛かっても不思議じゃないわな...

 いつか行ってみたいって気はあるけど...現状だと難しいだろうな...

「でも交易自体はあるってことよね? こうやってお米が存在してるんだから」

「左様でございます。もっとも、交易が開始されたのは極最近のことですから、ご存知ない方の方が多いと思います。お嬢様は良くご存知でいらっしゃいましたね?」

「えぇ、まぁね...前に本で読んだことがあるから...」

 私は曖昧に暈した。

「なるほど。お嬢様は慧眼であらせられますな。感服致しました」

「それでお米の話に戻るけど、今夜のメニューに選んだ理由はなぜ?」

「はい、聞くところによりますと、お米を赤く炊いたお赤飯という料理が、かのジパングという国ではお祝い事に欠かせないものだそうです。見た目も赤くておめでたい雰囲気も醸し出していますので、そのことを知っている貴族家の間では密かなブームになっているそうでございますよ?」

「あぁ、なるほど...それで...」

 シンシアや両親がお赤飯を連呼してた理由が分かったよ。

「ねぇ、セバスチャン。ジパングと交易してるのはお米だけ? 他にもなにかあったりする?」

 実はこの点が一番聞きたかった。私は期待を込めてそう尋ねた。
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