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「なぜそんな真似を?」

「答えてもいいが、その前に君の考えを聞いてみたいな。聡明な君のことだから、ある程度の予想は立てているんだろう?」

 私はチラッと父親の方を見た。軽く頷いてくれたので、遠慮なく自分の考えを披露することにした。

「あなた様は本気で王位に就こうとは考えていらっしゃらない。そう望んでおられるのは王妃様のみで、あなた様は王位にそれほど執着なさってはおられない。私はそのように見立てました。どうでしょうか? 間違っておりますか?」

「いや、驚いたな...全くもってその通りだよ...」

 アレクサンドル王子は両手を広げて降参のポーズを取った。

「一体いつ頃からそんな風に考えるようになっていったんですか?」

 私の問いには直接答えず、アレクサンドル王子は室内を見渡しながらこう言った。

「懐かしいな、この部屋...リーチェ...いやベアトリーチェ公爵令嬢、覚えているかい? ここで僕の婚約者候補を集めてお茶会を開いたことを?」

「えぇ、もちろん...忘れる訳がありませんわ...」

 将棋倒しに巻き込まれて前世の記憶が蘇った。そこから私の第二の人生がスタートしたんだ。忘れっこない。

「僕がそう思うようになったのはね、あの日がきっかけなんだ...」

「えっ...」

「あの日、我先にとばかりに僕に向かって群がって来る令嬢達の姿を見ていたらさ...僕はね...純粋に虚しさを感じてしまったんだよ...なんだかまるで自分が有名ブランドのバーゲン品にでもなったかのような...彼女達が本当に求めているのは、僕じゃなくて王子っていうブランドの方なんだろうなって思ったらさ...なんか途端になにもかもがバカらしくなっちゃってね...」

「...」

 前世の記憶を取り戻す前の私もその一員だったな...そう思うと私はなにも言えなくなってしまった...

「その内、令嬢達が将棋倒しになっていったよね...その様を見て尚更気持ちが冷めたっていうか...良い気味だって思ったっていうか...下敷きになって怪我をした君には申し訳ないけど...罪の呵責みたいな感情は一ミリも湧かなかったよ...」

「...」

 そう思って当然だろうな...なにせ完全に私の、いや私達の自業自得なんだから...

「その後、君の所にお見舞いに行って来いと母に言われた時、正直イヤでイヤでしょうがなかったよ...母はこれはチャンスだとばかりに色めき立っていたけどね...僕はそんな母の姿も冷めた目で見ていたんだ...」

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