転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「回りくどいことは好きじゃないんで、率直にお聞きしますね? アレクサンドル王子殿下、あなた様は猫を被っていらっしゃっいますよね?」

 私は敢えて愛称じゃなく正式名で呼んだ。

「...それはどういう意味かな?」

 アレクサンドル王子はしばし沈黙した後、徐に口を開いた。

「言葉通りの意味です。あなた様はわざと出来の悪い風を装おっていらっしゃる。それは一体どうしてなんでしょうか? なにが目的なんでしょうか? 是非ともお伺いしたく存じます」

「...なぜそんな風に思ったんだい?」

「私に教えてくださった数学の問題、あれってかなりの難問だったんですよ。マルガリータに確認を取りましたから間違いありません。それをあなた様は一瞬で解かれましたよね? 相当に頭が良くないとそんなことは無理でしょう」

「...」

「次に剣捌きです。こちらは我が父に確認を取ったのですが、真後ろからの攻撃、つまり死角からの攻撃を簡単に受け流すには相当な技量が要るとのことでした」

「...」

 アレクサンドル王子は無言を貫いている。

「それとこれはマルガリータと雑談した時に聞いた話なんですが...」

『ねぇ、リータ。あなたとアレク様って普段どんな会話をしているの?』

『う~ん...色々ですね。好きなお芝居の話だったり、最近読んで面白かった本の話だったり。あ、後は私の質問に良く答えていただいていたりしますね』

『質問て?』

『ほら、私って今、お母様に公爵令嬢としての振る舞い方を教えて貰っている最中じゃないですか? そこで出て来た外交の話や政治・経済の話なんかの分からないところを教えていただいています。私の質問に淀みなく答えてくださるところなんか、やっぱりさすがは王子様なんだなっていつも感心しちゃってますね』

「...これを聞いた当初は『あぁ、そうなんだ』ってくらいの感想しか抱かなかったんですが、今思うとここら辺にもあなた様の頭の良さが垣間見えていますよね?」

「...」

 アレクサンドル王子はずっと無言を貫いままだ。これはもう認めていると言っているようなもんだと思う。

「私が猫を被っていらっしゃっると判断した理由は以上となります」

「...」

 そう私が締めた後も、アレクサンドル王子はしばらく無言のままだった。ややあって、ようやく重い口を開いた。

「...いや、参ったな...上手く隠しているつもりだったんだが...こうして並べられると、僕って結構やらかしていたんだなってしみじみそう思うよ...」

 アレクサンドル王子は苦笑しながらそう言った。
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