上 下
254 / 316

254

しおりを挟む
「もしかしたら、そんなお兄さんに目を付けられるのがイヤで、わざと手を抜いて目立たないようにしてるとか?」

「あぁ、確かにその可能性は考えられるな。もっとも、本人に聞いてみなけりゃ本当のところは分からないが」

「そうですね」

 聞いても本音を聞かせてくれるかどうか分かんないけどね。

「リーチェ、実を言うとね? 今現在、王宮の内部でも意見が割れてたりするんだよ」

「意見?」

「第一王子と第二王子、どちらが次の王位に相応しいか? っていうね。それは一重に、第一王子が評価を下げていることが原因だったりするんだ」

「なるほど...つまり第二王子の評価が上がったんじゃなくて、第一王子が勝手に評価を下げたから相対的に見れば拮抗しているような状態になってるって訳ですね?」

「そういうことになるな」

 私はちょっと考え込んだ。これまでのアレクサンドル王子の言動と、現在の状況を見比べてみると、辻褄の合わない点が多々あるように思う。

「ねぇ、お父様。アレクサンドル王子殿下は本当に王位を狙っているんでしょうか?」

「それどういう意味だい?」

「いえね、王妃様がご自分の息子を王位に就けたいって気持ちはイヤっていうほど伝わって来るんですよ。それこそずっと私に執着してた時なんかは特に。でもね、今思い返してみると、アレクサンドル王子殿下ご本人からはそういった感じがあんまり伝わって来なかったんですよね」

 なにせ初対面の時にハッキリ言われたからね。王妃に言われたから私の所に来たって。

 その後、領地にまで追い掛けて来られた時は辟易したもんだったけど、今思うとあれも王妃に言われたから仕方なく来てただけかも知れないよね。

「つまり必ずしもご本人の意志じゃなく、あくまでも王妃様の意志に従っているだけの行動に過ぎないかも知れないと?」

「えぇ、そう考えるとしっくり来ません? だってご本人が本当に王位をお望みなら、猫を被る必要なんてどこにもないじゃないですか? 周りの評価を下げるだけでなんのメリットもないんですから」

「確かにそうだな...」

「お兄さんと本気で王位を争う気なら、目を付けられるのがイヤだなんて言ってる場合じゃないと思いますし、逆にお兄さんの評価を下げるくらいの気概を持たないとダメだとも思います」

 そう、今のアレクサンドル王子ってなんか中途半端に見えてしまうんだよね。どっち付かずというか態度がハッキリしないというか。

 やっぱりここは一度本人に本音を聞いてみるしかないかも知れないよね。はぐらかされるかも知れないけどさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。 けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。 その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。 ※小説家になろうにも投稿しています

悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理
恋愛
入園式初日に、この世界が乙女ゲームであることに気づいてしまったカーティス公爵家のヴィヴィアン。ヒロインが成り上がる為の踏み台にされる悪役令嬢ポジなんて冗談ではありません。早速、回避させていただきます! ※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきますが、よろしくお願い致します。 ※ カクヨム様にも、ほぼ同時掲載しております。

お妃候補は正直しんどい

きゃる
恋愛
大陸中央に位置する大国ヴェルデ。その皇太子のお妃選びに、候補の一人として小国王女のクリスタが招かれた。「何だか面接に来たみたい」。そう思った瞬間、彼女は前世を思い出してしまう。 転生前の彼女は、家とオフトゥン(お布団)をこよなく愛する大学生だった。就職活動をしていたけれど、面接が大の苦手。 『たった今思い出したばかりだし、自分は地味で上がり症。とてもじゃないけど無理なので、早くおうちに帰りたい』 ところが、なぜか気に入られてしまって――

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

『踊り子令嬢』と言われて追放されましたが、実は希少なギフトでした

Ryo-k
ファンタジー
サーシャ・フロイライン公爵令嬢は、王太子で『勇者』のギフト持ちであるレオン・デュボアから婚約破棄を告げられる。 更には、実家である公爵家からも追放される。 『舞踊家』というギフトを授けられた彼女だが、王国では初めて発見されたギフトで『舞踊』と名前がつくことからこう呼ばれ蔑まれていた。 ――『踊り子令嬢』と。 追放されたサーシャだが、彼女は誰にも話していない秘密あった。 ……前世の記憶があるということを。 さらに『舞踊家』は前世で彼女が身に着けていた技能と深くかかわりがあるようで…… 追放された先で彼女はそのギフトの能力を発揮していくと…… ※この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する

白バリン
ファンタジー
 田中哲朗は日本で働く一児の父であり、定年も近づいていた人間である。  ある日、部下や娘が最近ハマっている乙女ゲームの内容を教えてもらった。  理解のできないことが多かったが、悪役令嬢が9歳と17歳の時に婚約破棄されるという内容が妙に耳に残った。  「娘が婚約破棄なんてされたらたまらんよなあ」と妻と話していた。  翌日、田中はまさに悪役公爵令嬢の父親としてゲームの世界に入ってしまった。  数日後、天使のような9歳の愛娘アリーシャが一方的に断罪され婚約破棄を宣言される現場に遭遇する。  それでも気丈に振る舞う娘への酷い仕打ちに我慢ならず、娘をあざけり笑った者たちをみな許さないと強く決意した。  田中は奮闘し、ゲームのガバガバ設定を逆手にとってヒロインよりも先取りして地球の科学技術を導入し、時代を一挙に進めさせる。  やがて訪れるであろう二度目の婚約破棄にどう回避して立ち向かうか、そして娘を泣かせた者たちへの復讐はどのような形で果たされるのか。  他サイトでも公開中

【完結】今世は我儘なぐーたら令嬢を目指します

くま
恋愛
一つ下の妹のキャンディは愛嬌は良く可愛い妹だった。 「私ね、お姉様が大好きです!」 「私もよ」 私に懐く彼女を嫌いなわけがない。 公爵家の長女の私は、常に成績トップを維持し、皆の見本になるようにしていた。 だけど……どんなに努力をしていても、成績をよくしていても 私の努力の結果は《当たり前》 来月私と結婚を控えている愛しい婚約者のアッサム様…… 幼馴染であり、婚約者。とても優しい彼に惹かれ愛していた。 なのに……結婚式当日 「……今なんと?」 「……こ、子供が出来たんだ。キャンディとの」 「お、お姉様……ごめんなさい…わ、私…でも、ずっと前からアッサム様が好きだったの!お姉様を傷つけたくなくて……!」 頭が真っ白になった私はそのまま外へと飛びだして馬車に引かれてしまった。 私が血だらけで倒れていても、アッサム様は身籠もっているキャンディの方を心配している。 あぁ……貴方はキャンディの方へ行くのね… 真っ白なドレスが真っ赤に染まる。 最悪の結婚式だわ。 好きな人と想い合いながらの晴れ舞台…… 今まで長女だからと厳しいレッスンも勉強も頑張っていたのに…誰も…誰も私の事など… 「リゼお嬢様!!!」 「……セイ…」 この声は我が家の専属の騎士……口も態度も生意気の奴。セイロンとはあまり話したことがない。もうセイロンの顔はよく見えないけれど……手は温かい……。 「俺はなんのために‥‥」 セイロンは‥‥冷たい男だと思っていたけど、唯一私の為に涙を流してくれるのね、 あぁ、雨が降ってきた。 目を瞑ると真っ暗な闇の中光が見え、 その瞬間、何故か前世の記憶を思い出す。 色々と混乱しつつも更に眩しい光が現れた。 その光の先へいくと…… 目を覚ました瞬間‥‥ 「リゼお姉様?どうしたんですか?」 「…え??」 何故16歳に戻っていた!? 婚約者になる前のアッサム様と妹の顔を見てプツンと何かが切れた。 もう、見て見ぬフリもしないわ。それに何故周りの目を気にして勉強などやらなければならいのかしら?!もう…疲れた!!好きな美味しいお菓子食べて、ぐーたら、したい!するわ! よくわからないけれど……今世は好き勝手する!まずは、我慢していたイチゴケーキをホールで食べましょう!

処理中です...