249 / 316
249
しおりを挟む
本日、領地に於ける全ての引き継ぎを済ませた私とマルガリータは王都に向けて旅立つ。一個小隊を再び引き連れて...
「お姉様、どうぞお元気で...」
「ラインハルトもね。しっかり修行しなさい」
私達は久し振りのハグをして別れた。出会った時には私の胸の辺りにあったラインハルトの顔が、今や見上げる位置にあるのが時の流れを感じさせる。私はちょっとだけセンチな気分になった。
馬車には私とマルガリータ、そしてシンシアとカレンが同乗する。もう一台の馬車は荷馬車として私とマルガリータの私物を収納している。
「エドワード、ラインハルトのことをよろしく頼むわね?」
「お任せください」
「では出発しましょうか」
私は最後に白亜の屋敷をしっかりと目に焼き付けてから馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
今回も当然ながら何事もなく王都に着いた。父親がホッとした表情で出迎えてくれる。
「二人共お帰り。無事でなによりだ」
「ありがとうございます、お父様。ただいまま戻りました。お母様は今日は?」
「リーナは今日、王妃様のお茶会にお呼ばれされているんだよ」
「王妃様の? お父様、ということは...」
「あぁ、恐らくは具体的な話をされているのかも知れないな」
「そうですか...」
いよいよか。私はカレンと談笑しているマルガリータをチラッと見やった。
「二人共疲れているだろう? 夕食まで自分の部屋でゆっくりしなさい」
「いいえお父様。そういう訳にはいきませんよ。荷解きしませんと」
「あぁ、そうだったな。使用人に手伝わせよう」
「ありがとうございます」
◇◇◇
荷解きが終わってホッと一息付いた頃には夕食の時間になっていた。食堂には母親の姿があった。
「二人共お帰りなさい」
「お母様、ただいま戻りました」
「マルガリータ。早速なんだけど明日、アレクサンドル王子殿下がいらっしゃることになったのよ。目一杯お粧ししてお出迎えしてちょうだいね?」
「は、はい、わ、分かりました...」
やっぱりか。私は父親とそっと目配せし合った。当のマルガリータはまだ良く分かっていないようだった。
夕食の後、明日の用意をしておきなさいと言ってマルガリータを先に部屋へと戻した。食堂に残った私と両親は、食後のお茶を嗜みながら話し合いを行う。
「お母様、明日いらっしゃる殿下の目的はやはり...」
「えぇ、マルガリータに婚約を申し込みにいらっしゃるわ」
「やっぱりそうですか...それにしても随分と耳が早いですね? マルガリータをウチの養子にする件ってまだ公にはしていませんよね?」
「確かにまだ公にはしてないけど、なにせスカウト合戦まで繰り広げた娘ですもの。噂にはなっていたのよ。稀代の天才をどこの貴族家が獲得するのかってね。当然王妃様の耳にも入ったわ」
「お姉様、どうぞお元気で...」
「ラインハルトもね。しっかり修行しなさい」
私達は久し振りのハグをして別れた。出会った時には私の胸の辺りにあったラインハルトの顔が、今や見上げる位置にあるのが時の流れを感じさせる。私はちょっとだけセンチな気分になった。
馬車には私とマルガリータ、そしてシンシアとカレンが同乗する。もう一台の馬車は荷馬車として私とマルガリータの私物を収納している。
「エドワード、ラインハルトのことをよろしく頼むわね?」
「お任せください」
「では出発しましょうか」
私は最後に白亜の屋敷をしっかりと目に焼き付けてから馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
今回も当然ながら何事もなく王都に着いた。父親がホッとした表情で出迎えてくれる。
「二人共お帰り。無事でなによりだ」
「ありがとうございます、お父様。ただいまま戻りました。お母様は今日は?」
「リーナは今日、王妃様のお茶会にお呼ばれされているんだよ」
「王妃様の? お父様、ということは...」
「あぁ、恐らくは具体的な話をされているのかも知れないな」
「そうですか...」
いよいよか。私はカレンと談笑しているマルガリータをチラッと見やった。
「二人共疲れているだろう? 夕食まで自分の部屋でゆっくりしなさい」
「いいえお父様。そういう訳にはいきませんよ。荷解きしませんと」
「あぁ、そうだったな。使用人に手伝わせよう」
「ありがとうございます」
◇◇◇
荷解きが終わってホッと一息付いた頃には夕食の時間になっていた。食堂には母親の姿があった。
「二人共お帰りなさい」
「お母様、ただいま戻りました」
「マルガリータ。早速なんだけど明日、アレクサンドル王子殿下がいらっしゃることになったのよ。目一杯お粧ししてお出迎えしてちょうだいね?」
「は、はい、わ、分かりました...」
やっぱりか。私は父親とそっと目配せし合った。当のマルガリータはまだ良く分かっていないようだった。
夕食の後、明日の用意をしておきなさいと言ってマルガリータを先に部屋へと戻した。食堂に残った私と両親は、食後のお茶を嗜みながら話し合いを行う。
「お母様、明日いらっしゃる殿下の目的はやはり...」
「えぇ、マルガリータに婚約を申し込みにいらっしゃるわ」
「やっぱりそうですか...それにしても随分と耳が早いですね? マルガリータをウチの養子にする件ってまだ公にはしていませんよね?」
「確かにまだ公にはしてないけど、なにせスカウト合戦まで繰り広げた娘ですもの。噂にはなっていたのよ。稀代の天才をどこの貴族家が獲得するのかってね。当然王妃様の耳にも入ったわ」
0
お気に入りに追加
2,148
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?
まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。
☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。
☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。
☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。
☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。
☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる