転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

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　私の場合、転生する前は一般庶民だったので当然のことながらお付きのメイドなんて居る訳がない。

　それでも転生した後にシンシアとの主従関係をスンナリと受け入れることが出来たのは、一重にベアトリーチェの持っていた記憶のお陰だったりする。

　良くも悪くも公爵令嬢として生まれ落ちたベアトリーチェは、生粋のお嬢様として蝶よ花よと我が儘に育てられた。

　その過程でベアトリーチェは上下関係や主従関係を意識の中で構築していった。まぁ、勘違いして認識していた部分も多々あったせいで、結果として傲慢で高慢ちきな少女が完成しちゃった訳なんだけどね。

　ともあれ、そういった土台というか積み重ねが最初っから私にはあったからこそ、シンシアや他の使用人なんかとも自然に対応することが出来たんだ。

　だが元々平民だったマルガリータには、私の時みたいな土台も積み重ねも何もない訳で、そりゃあ一から構築しようと思ったら大変だわな。

　さて、どうしたものか...

「ベアトリーチェお嬢様、ちょっとよろしいでしょうか?」

　迷っていると、シンシアがわざわざ正式名称で私のことを呼んだ。長ったらしくてイヤだとかホザいてたクセに...

「いいわよ?」

「では失礼して...マルガリータお嬢様?」

「ひゃいっ!?」

　マルガリータがビックリして飛び上がった。まだお嬢様呼びに慣れていないのが歴然だ。そういやシンシアのヤツ、マルガリータをお嬢様呼びするのも長ったらしくてイヤだとかホザいてやがったよな...

「まずは毅然とした態度を取るべきと思います。使用人のことを友達を呼ぶみたいにちゃん付けで呼ぶことは感心しません。そこら辺の意識から改革する必要があるんじゃないでしょうか?」

「そ、そう言われましても...急には無理です...私達の間にはシンシアさんとお姉様のような信頼関係がまだありませんから...」

　なるほど。シンシアのことはさん付けで呼ぶことにしたのか。まぁこれも感心した話じゃないが、シンシアの方が歳上だし私付きのメイドでもあるし、ギリOKってところかも知れないな。シンシアも特に突っ込む様子もないし。

「それでもです。主従関係はハッキリさせておかないと。公の場で使用人をちゃん付けで呼んだりなんかしたら、恥を掻くのはマルガリータお嬢様だけじゃ済みませんよ?　ベアトリーチェお嬢様や旦那様、奥様に至るまで、つまりバレンタイン公爵家そのものが恥を掻くことに繋がるんです。そこのところを良くお考えくださいませ?」