転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

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「あ、あの～...ちょっとよろしいでしょうか...」

　私達がバカやってるところに、おずおずといった感じでマルガリータがやって来た。

「あら?　どうしたのマルガリータ?　あなたの方の引っ越しの準備は順調に進んでる?」

「...えぇ、まぁ...元々、私の私物なんて大したことない量ですし...」

「それは良かったわ。あ、カルロスさんの具合はどう?」

「...はい、おかげさまで...やっと落ち着いたみたいです...」

「良かったわね。それで?　なにか用だった?」

「...え、え～と...そ、そのですね...お、お姉様に教えていただきたいことが...」

『お姉様!?』

　私達三人の声が見事に被った。誰のこと言ってんだ!?

「...は、はい...そ、その...り、リーチェお姉様に...」

「あぁ、私のことか...なに?　結局、お姉様呼びすることにしたって?」

「...は、はい...わ、私よりもお姉様の方が誕生日が早いですし...問題ありませんよね?」

「問題大有りだよ!　僕と被るじゃないか!」

　ラインハルトが即座に反応した。

「い、いいじゃありませんか、それくらい!　お、男だったらそんなみみっちいこと言わないでくださいよ!」

「な、なんだとぉ～!」

「な、なんですかぁ～!」

「二人とも止めなさい」

　私は堪らず割って入った。

「呼び方はどうだっていいわよ。マルガリータがそう決めたんならそれでいい。ラインハルトも引きなさい」

「...分かりましたよ...」

　ラインハルトは、不承不承といった感じではあるが取り敢えず引き下がった。

「それで?　私に聞きたいことって?」

　私は先を促した。

「あ、はい...その...カレンちゃんの扱いをどうすればいいのかなって...」

『カレンちゃん!?』

　またしても私達三人の声が見事に被った。

　そして私の脳内ではなぜか芦毛の競走馬と、ウマ耳を付けた『可愛い』を強調する女の子の姿が浮かんでいた。これはなんだろう?　不思議な現象もあるものだな。

「あなた、カレンのことをちゃん付けで呼んでんの?」

「は、はい...」

「聞いたことないわよ...自分付きのメイドをちゃん付けで呼んでる人なんて...」

　私は呆れてしまった。私とシンシアの関係を見ていれば分かることだろうに。からかう時でもない限り、私がシンシアのことをちゃん付けで呼ぶなんて有り得ない。

「す、すいません...そ、そこら辺の距離感みたいなものがまだ上手く掴めなくて...」

　あぁ、それは確かに無理もないか。いきなり主従関係を構築しろって言われても戸惑っちゃうよね。