転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「あぁっ! 愛しのベアトリーチェ! 我が天使よ! 良く帰って来てくれた! 顔をよおく見せておくれ! あぁ、可愛い可愛い♪ チュッチュッ♪」

「ベアトリーチェ! しばらく見ない間に大きくなったんじゃない!? 女の子の成長は早いわねぇ! 顔をよおく見せてちょうだい! あぁ、愛しい愛しい♪ チュッチュッ♪」

 結論から言うと、その後は何事もなく無事王都に到着した。そして私は最早恒例となった両親からの熱烈なハグの嵐を、心を無にしてただひたすら耐えているのだった。嵐が通り過ぎるまで...

 でもなぁ...今回はいつもと違って私達、つまりラインハルトやシンシアといった身内だけじゃなくて、カルロスさん一家も一緒に帰って来てんだよなぁ...いい加減そろそろ止めてくんないかなぁ...恥ずかしいしカルロスさん一家ドン引きしてるし...

「...お父様、お母様、ベアトリーチェただいま戻りました。そして...」

 やっと満足したらしい両親がちょっと離れた隙に、私は急いで挨拶してカルロスさん一家を紹介しようとした。

「あぁ、手紙で読んだよ。こちらがカルロスさんご一家だね? どうも初めまして。ベアトリーチェの父です」

「我がバレンタイン公爵家へようこそいらっしゃいました。ベアトリーチェの母でございます」

 ここら辺はさすがに腐っても公爵家。父親に握手を求められたカルロスさん、そして見事なカーテシーを披露した母親の姿に、マルガリータとアンドリューも揃って家族全員、まるで石化の魔法を掛けられたように固くなってしまった。

「さぁ、長旅で疲れたろう? 積もる話は中で」

 私達は揃って客間に移動した。


◇◇◇


「あれ?」

 客間を見渡した私は、違和感に気付いて思わず声を上げてしまった。

「ん!? リーチェ、どうかしたのかい!?」

「あぁ、いえその...バートリー伯爵がいらっしゃらないなと思いまして...」

 さっき両親が出迎えに出て来た玄関先でもお見掛けしなかった。ならてっきり客間で待ってるもんだとばかり思ってたんだが。

「そりゃあ居ないさ。呼んでないからね」

「あぁ、そうでしたか...って!? うえぇっ~!?」

 私は素っ頓狂な叫び声を上げていた。

「な、なんで呼んでないんですかぁ~!? 顔合わせしたいってちゃんと手紙に書いたでしょうぉ~!?」

 なにやってんだこの父親は!? なんのためにカルロスさん一家を連れて来たと思ってんだよ!? 私は頭を抱えた。

「だって必要ないからね。マルガリータはウチの養子になるんだから」

「はいぃ~!?」

 思いもよらない父親の言葉に、私の頭は混乱の極みに達していた。
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