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「えっ!? 良くあることなの!?」

「はい、しょっちゅう」

 シンシアはケロッとした顔でそんなことを言ってきたが、

「そ、それじゃ今までも何度も経験してたってこと!?」

「はい、何度も」

「知らなかったわ...だってあなた達、そんなこと一言も言ってなかったじゃないのよ...」

 少なくとも私は聞いた記憶がない。

「言いませんでしたっけ?」

「聞いてないわよ...」

「まぁ、言う必要もありませんからね。別に大したことじゃないし。だから忘れていたのかも知れませんね」

「あなたそんなにあっさりと...」

 私が呆れていると、

「片付きました。先を急ぎましょうか?」

 これまたなんでもないことのように、ラインハルトが戻って来てそう言った。

「えっ!? もう!?」

「はい、大したことない雑魚でした」

「あ、あの...か、片付いたってその...こ、殺っ...」

 私は皆まで言えなかった。

「あぁ、いえいえ。何人かを軽く小突いた程度ですよ? 我々には到底敵わないと見るや、ヤツらは尻尾巻いて逃げ出しましたからね」

「そ、そうなのね...」

 なんだか急にラインハルトが頼もしく見えてきたよ...

「ラインハルト様、カルロスさん一家の方は大丈夫でしたか? 怖がっていませんでしたか?」

 そうそう! 私もそれは気になってたんだよ! シンシア、良くぞ聞いてくれた!

「男連中は割と平気だったかな? 多少は慣れてるんだろね。ただ、マルガリータだけはかなりビビッてたみたいだね」

「そうでしたか。これから貴族になるんだから、もうちょっと毅然たる態度を取るようにと教育せねばなりませんね」

「まぁそうは言っても、さすがに一朝一夕じゃそこまでは無理なんじゃない? もうちょっと長い目で見てやってもいいんじゃないかな?」

「ラインハルト様、甘やかしてはなりません。ただでさえ時間が無いんですから。もっともっと厳しくしないと」

「はいはい、シンシア先生は相変わらずスパルタでいらっしゃる」

「ラインハルト様、茶化さないでくださいな」

 ...なんだが急に始まってしまった二人の貴族談義を、私はただ黙って聞いていることしか出来なかった。

 というか、ついさっきまで盗賊の襲撃に怯えていた私は、そんな簡単に恐怖を払拭することなんて出来なかった。

 まるで何事もなかったかのように、世間話をしている二人のメンタルはなんて強靭なんだろうって思ってた。

 そこら辺は私も見習うべき点なのかも知れないな。

「では出発します」

 御者席に戻った護衛が馬車を発進させた。王都までは約二日の旅だ。この後はなにも起こらないといいが...私はそう願わずにはいられなかった。
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