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「あ、あの...そ、その...」

 マルガリータはモジモジしながら俯いてしまった。

 まぁ、無理もない。いきなりそんなこと言われてもねぇ。当然ながら心の準備だって全くしていなかっただろうし。

「マルガリータ、焦らなくていいのよ? 自分の気持ちに正直に答えてご覧なさいな?」

 だから私は殊更優しく促してみた。

「...わ、私は...」

 ややあって、ようやくマルガリータが語り始めた。

「そ、その...お、王子様を...お、お慕い...申し上げて...おり...ます...」

 最後の方は蚊の鳴くような声になってしまったが、マルガリータはハッキリと自分の気持ちを口に出した。顔は茹で蛸みたいに真っ赤っかになっちゃったけどね。

「よろしい。その言葉が聞けただけで十分よ。マルガリータ、後のことは私に任せなさい。必ずやあなたと王子様をくっ付けてみせるわ」

「く、くっ付け!?...ぴやっ!?」

 マルガリータはなにやら奇声を発して更に俯いてしまった。 

「それでね、マルガリータ。ここからが本題なんだけどね。王子様と付き合うにあたって、クリアしておかなければならない条件がいくつかあるのよ」

「条件...ですか?」

 マルガリータがやっと顔を上げた。顔にはまだ赤みが残っているけど。

「えぇ、まず一つ目が身分ね」

「身分...」

「そう、仮にも王族と付き合う立場になるんだから、最低限それに見合う立ち位置ってものが必要になってくる訳よ。この場合だとまずは爵位ね」

「しゃ、爵位...で、でも私は...」

 うんうん、平民だもんね。

「えぇ、良く分かってるわ。だからね、マルガリータ。あなた貴族になりなさい」

「ひょえっ!?」

 マルガリータはまたもや奇声を発して驚いている。まぁ、ビックリして当然っちゃ当然か。いきなり明日から、

『私、貴族になりま~す♪』

 みたいに『私、魔法少女になります』のようなノリで語れるもんじゃないからね。

「具体的にはね、そこにいるシンシアの家の養女になって貰おうと思っているの」

 ちょうど良いタイミングで、シンシアが新しいお茶を入れて持って来てくれた。

「ぴえっ!?」

 シンシアに軽く一瞥されたマルガリータは、短い悲鳴を上げて思いっきり仰け反った。

「そうだわ、今の内から呼び方に慣れておきなさいな?」

「よ、呼び方って...」

「そりゃ当然『シンシアお姉様』に決まっているじゃないの?」

「ひょわっ!?」

 今度は奇声を発したまま固まっちゃったよ。マルガリータの反応がいちいち新鮮なんで見てて楽しいな♪
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