転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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 次の日、私が自室で手紙を書いていると、

「リーチェ様ぁ~! 助けて下さ~い!」

 涙目のマルガリータが駆け込んで来た。

「マルガリータ...またなの...」

 私は舌打ちを禁じ得なかった。ここのところ、毎日のようにこんな感じだ。マルガリータに対する、シンシアの貴族マナー教育はますます厳しさを増している。

 その厳しさに耐えられず、こうしてマルガリータはシンシアから逃げ回っているという訳だ。

 王立学園への入学まであまり間がないから、厳しくするのは当然と言えば当然なのだが、こう何度も泣き付かれて来ても困る。私の仕事にも支障を来す。

「気持ちは分かるけど...シンシアだってあなたのことが憎くて厳しくしてるんじゃないのよ? 時間がないから仕方なくそうしてるの。それはあなただって良く分かってることなんじゃないの?」

 実は私怨が絡んでいるのかも知れないけどね...マルガリータに対するシンシアの思いを聞いた後だと、そんな風に勘繰りたくもなるよね...

「うぅ...た、確かにその通りなんですけど...でもでも! それにしたって厳し過ぎますよ! ほら、見て下さい! このミミズ腫れを! こんなのもう体罰ですよ体罰!」

 マルガリータが袖を捲って腕を見せる。確かにミミズ腫れが赤くなっているな...見るだけで痛そうだ...

 だがここで私が仏心を出す訳にはいかない。心を鬼にしてマルガリータを突き放す。

「ちょっとシンシアが力加減を間違えただけでしょ? そのくらいで大騒ぎしなさんな」

「そんな! そんなぁ~! リーチェ様ぁ~! 酷いですぅ~!」

 マルガリータが甘えたような声を発する。以前までの私なら、マルガリータを抱き締めて「お~ 良し良し」とか甘やかしていたもんだが、私に対するマルガリータの横縞な考えを知った後は自重している。

 今だってマルガリータと私との間には机を挟んで、マルガリータを近寄らせないようにしている。

 マルガリータは不満そうに目で訴えて来るが、私は敢えて見ないフリをする。

「やっぱり...ここに逃げ込んでましたか...」

 そこに般若のような顔をしたシンシアが入って来た。

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」

 途端にマルガリータが悲鳴を上げる。

「お仕置きが必要ですね...ほら、マルガリータ。行きますよ?」

 ビシィッ! っと、シンシアが長い定規を振り回す。あれで殴られるとホント痛いんだよね...私もマナー教育の時に何度も殴られたっけなぁ...

「いやいやいやぁ! 助けて助けて助けてぇ~! 誰かぁ~!」

 そんな風に私が回想している間に、マルガリータは引き摺られるようにしてシンシアに連れて行かれた。

 マルガリータよ、安らかに眠れ...合掌...チーン...
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