転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

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「そんな勿体ない...お嬢様ならまだまだこれからも才能を遺憾なく発揮されると思いますのに...」

「だからもう十分だって」

「お嬢様がその気になりさえすれば、天下だって獲れるかも知れないですのに...」

「いやいや、わたしゃ一体どこの覇王だよ!?　そんなもん興味もないし、そもそも獲れる気もしないし獲る気もないっつ～の...」

　なに考えてんだコイツは!?　私のことを過大評価し過ぎるにも程があるだろ!?　天下なんてどうやって獲るのか見当も付かんわ...というか目指してないし...

「そうですか?　お嬢様ならイケそうな気がするんでけど...」

「シンシア、根拠のない話するの止めなさい...全くイケてないってば...」

「ハァ...分かりました...」

　シンシア、なんでそんなに不満気なんだよ!?　お前は私を一体どうしたいんだ!?

「それじゃお嬢様はもうお仕事を引退なさると?」

「引退って...まぁ、そうね...誰かと結婚してその人の家に入ったら、必然的にそうなるでしょうね。ほら、男の人って女が自分の仕事に口出しするのイヤがるでしょ?」

「確かに世間一般的にはそう言った風潮にあるのかも知れませんけど、一概に全てがそうであるとは言えないんじゃないですか?」

「例えば?」

「旦那様とか」

「あぁ、それはお父様が特殊というか寛容だったというか。本当に稀有な例だから参考にはならないと思うわよ?」

「そうなんですか?」

「えぇ、それに私が血を分けた娘だったということも大きいわね。これが例えば配偶者だったりしたら、こんな風に自由奔放にはやらせてくれなかったと思うわ」

「なるほど...」

　そこでシンシアはなにやら考え込んでしまった。私はお茶を飲みながら待っていると、

「それならやっぱりお嬢様はラインハルト様と結ばれるべきですよ」

　また話を蒸し返して来やがった...

「だからなんでそうなるのよ...」

　私は段々と疲れて来た。

「だってラインハルト様なら、お嬢様に頭が上がらないじゃないですか?　すなわち、結婚してもお嬢様は今まで通り好き勝手に振る舞えるってことになるじゃないですか?」

「......」

　それは考えもしなかったな...良い所を突かれたと思った私は、思わず沈黙してしまった。

　シンシア、中々やるじゃないか...でも...それでもやっぱり私は...

「うん、無理...ちょっと想像してみたけどやっぱ無理だわぁ...」

「だからどうしてですか?」

「なんと言われても無理なもんは無理」

　私はそう繰り返すしかなかった。