193 / 316
193
しおりを挟む
「ヒッヒッフー...ヒッヒッフー...すいません、取り乱しました...」
「お、落ち着いた?」
「えぇ、お陰様で...」
「だ、だったらその短剣をさっさと仕舞って! 仕舞って!」
私はそんな物騒なものを目の前にして気が気じゃなかった...シンシアって怖い...怖過ぎるよ...なんでそんなすぐに覚悟完了したような顔になんのさ...
「あ、失礼致しました」
そしてまたどこへともなく姿を消す短剣。手品か!? シンシアは手品師なのか!?
「フゥ...思いっきり喉が渇いちゃったじゃないのよ...シンシア、コーヒーお代わり」
「はい、ただいま」
「...だからコーヒーだって言ってんでしょうが...なんでお茶なのよ...ってか、このやり取り何度目?」
「コーヒーは何杯も飲むと胃を痛めますから」
「それは空きっ腹の時の話でしょ?」
目の前にはお茶請けのスコーンがあるじゃねぇかよ。
「だったら『夜眠れなくなったら困りますから』にしておきます」
「ハァ...もういいわよ...」
私は色々と諦めてお茶を口に運んだ。
「ところでお嬢様...その...お嬢様は本当にそれでよろしいのですか?」
「なにがよ?」
「ですから...政略結婚の駒として扱われることに関してです」
「あぁ、そのことね。う~ん...そうねぇ...完全に納得はしてないけど、こればっかりはしょうがないかなぁって感じかなぁ...」
「そうですか...」
「それにね? 子供の時分から...って、今でもまだ十分子供って言える年齢ではあるけど...要はもっと幼い頃から、領地改革やら資産運用やら好き放題やらせて貰っていたじゃない? もうそろそろいいかなって思ってるんだ。やりたいことは大体やって来たような気がするし、我が家の財政も領地の財政も立て直すことが出来たしね」
私は初めて自分の考えを誰かに吐露したような気がする。思えば額に傷を負い、前世の記憶を取り戻した辺りの頃、傷物の自分は一生結婚できないと思って自立する働く女性を目指していたものだった。
アレクサンドル王子の件もあったので、尚更結婚というものに臆病になっていたというのもある。多少無理してでも自立しなきゃなと思っていた。
そこからは前世の知識をフル活用しつつ、こっちの世界に合わせてアレンジしながら遮二無二突き進んで来た訳だが、気が付けばいつの間にやら傷痕は消え、アレクサンドル王子もマルガリータに押し付けられそうな感じになっている。
だったらもう、無理することないんじゃないか? 普通の貴族令嬢に戻って普通に結婚してもいいんじゃないのか?
私はそんな風に思い始めていたのだった。
「お、落ち着いた?」
「えぇ、お陰様で...」
「だ、だったらその短剣をさっさと仕舞って! 仕舞って!」
私はそんな物騒なものを目の前にして気が気じゃなかった...シンシアって怖い...怖過ぎるよ...なんでそんなすぐに覚悟完了したような顔になんのさ...
「あ、失礼致しました」
そしてまたどこへともなく姿を消す短剣。手品か!? シンシアは手品師なのか!?
「フゥ...思いっきり喉が渇いちゃったじゃないのよ...シンシア、コーヒーお代わり」
「はい、ただいま」
「...だからコーヒーだって言ってんでしょうが...なんでお茶なのよ...ってか、このやり取り何度目?」
「コーヒーは何杯も飲むと胃を痛めますから」
「それは空きっ腹の時の話でしょ?」
目の前にはお茶請けのスコーンがあるじゃねぇかよ。
「だったら『夜眠れなくなったら困りますから』にしておきます」
「ハァ...もういいわよ...」
私は色々と諦めてお茶を口に運んだ。
「ところでお嬢様...その...お嬢様は本当にそれでよろしいのですか?」
「なにがよ?」
「ですから...政略結婚の駒として扱われることに関してです」
「あぁ、そのことね。う~ん...そうねぇ...完全に納得はしてないけど、こればっかりはしょうがないかなぁって感じかなぁ...」
「そうですか...」
「それにね? 子供の時分から...って、今でもまだ十分子供って言える年齢ではあるけど...要はもっと幼い頃から、領地改革やら資産運用やら好き放題やらせて貰っていたじゃない? もうそろそろいいかなって思ってるんだ。やりたいことは大体やって来たような気がするし、我が家の財政も領地の財政も立て直すことが出来たしね」
私は初めて自分の考えを誰かに吐露したような気がする。思えば額に傷を負い、前世の記憶を取り戻した辺りの頃、傷物の自分は一生結婚できないと思って自立する働く女性を目指していたものだった。
アレクサンドル王子の件もあったので、尚更結婚というものに臆病になっていたというのもある。多少無理してでも自立しなきゃなと思っていた。
そこからは前世の知識をフル活用しつつ、こっちの世界に合わせてアレンジしながら遮二無二突き進んで来た訳だが、気が付けばいつの間にやら傷痕は消え、アレクサンドル王子もマルガリータに押し付けられそうな感じになっている。
だったらもう、無理することないんじゃないか? 普通の貴族令嬢に戻って普通に結婚してもいいんじゃないのか?
私はそんな風に思い始めていたのだった。
0
お気に入りに追加
2,145
あなたにおすすめの小説
モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?
悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!
飛鳥井 真理
恋愛
入園式初日に、この世界が乙女ゲームであることに気づいてしまったカーティス公爵家のヴィヴィアン。ヒロインが成り上がる為の踏み台にされる悪役令嬢ポジなんて冗談ではありません。早速、回避させていただきます!
※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。
※連載中も随時、加筆・修正をしていきますが、よろしくお願い致します。
※ カクヨム様にも、ほぼ同時掲載しております。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
道産子令嬢は雪かき中 〜ヒロインに構っている暇がありません〜
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「レイシール・ホーカイド!貴様との婚約を破棄する!」
……うん。これ、見たことある。
ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わったことに気づいたレイシール。北国でひっそり暮らしながらヒロインにも元婚約者にも関わらないと決意し、防寒に励んだり雪かきに勤しんだり。ゲーム内ではちょい役ですらなかった設定上の婚約者を凍死から救ったり……ヒロインには関わりたくないのに否応なく巻き込まれる雪国令嬢の愛と極寒の日々。
モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。
霜月零
恋愛
私は、ある日思い出した。
ヒロインに、悪役令嬢たるお姉様が言った一言で。
「どうして、このお茶会に平民がまぎれているのかしら」
その瞬間、私はこの世界が、前世やってた乙女ゲームに酷似した世界だと気が付いた。
思い出した私がとった行動は、ヒロインをこの場から逃がさない事。
だってここで走り出されたら、婚約者のいる攻略対象とヒロインのフラグが立っちゃうんだもの!!!
略奪愛ダメ絶対。
そんなことをしたら国が滅ぶのよ。
バッドエンド回避の為に、クリスティーナ=ローエンガルデ。
悪役令嬢の妹だけど、前世の知識総動員で、破滅の運命回避して見せます。
※他サイト様にも掲載中です。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
悪役令嬢は南国で自給自足したい
夕日(夕日凪)
恋愛
侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは7歳の誕生日が近づく頃、
前世の記憶を思い出し自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付く。
このまま進むと国外追放が待っている…!
焦るビアンカだが前世の自分は限界集落と称される離島で自給自足に近い生活をしていた事を思い出し、
「別に国外追放されても自給自足できるんじゃない?どうせなら自然豊かな南国に追放して貰おう!」
と目を輝かせる。
南国に追放されたい令嬢とそれを見守る溺愛執事のお話。
※小説家になろう様でも公開中です。
※ネタバレが苦手な方は最新話まで読んだのちに感想欄をご覧になる事をおススメしております。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる