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いよいよマルガリータが王立学園の入学試験に挑む日が近付いて来た。
今日、領地を出発して王都に向かう。
「マルガ、頑張ってね」
「は、はぃ~...」
「緊張してる?」
「す、少し...」
「あなたなら大丈夫よ。自信持って?」
私は震えているマルガリータを優しく抱き締めた。
「リーチェ様ぁ~!」
この一年で私の背は更に伸び、マルガリータはあんまり伸びなかったので、私が抱き締めるとマルガリータの顔は、私の胸に完全に埋もれてしまう。
「フガフガ~♪ クンカクンカ~♪ スースー♪ 柔らか~♪ 良い香り~♪」
マルガリータの息が当たってちょっとこそばゆくなる。
「はいはい。今生の別れじゃないんだからその辺で。ほら、マルガリータ。行くよ?」
ラインハルトはそんなマルガリータをペイッと私から引き剥がした。
「ブゥ~! ラインハルト様ぁ~! いけず~ 」
マルガリータがプクッと剥れた。そんな表情も可愛い。
「ラインハルト、後はよろしくね? お父様とお母様にもよろしく」
「お任せ下さい」
入学試験までの間、マルガリータには王都の屋敷で過ごして貰う手筈になっている。
「ほら、シンシア。あんたも早く馬車に乗りなさい」
「どうしても私も行かなきゃいけませんか...」
「なにを今更。決まったことじゃないの。さっさと行きなさい」
シンシアはまだごねている。
「リーチェ様ぁ~! 行って来ま~す!」
「行ってらっしゃい」
私は馬車の窓から手を振るマルガリータに手を振って応えた。
◇◇◇
次の日、私は劇場に赴いていた。アンドリューの様子を確認しておくためだ。
「ヘルマンさん、こんにちわ」
「これはこれはベアトリーチェお嬢様、ようこそお越し頂きました」
「アンドリューはどんな様子です?」
「良くやってくれていますよ。次の出し物で彼の書いた脚本を初めて採用することになりました。今日から稽古が始まります。よろしければ舞台をご覧になって下さい」
「それは重畳です。舞台の初日には是非とも観に来たいと思います。日にちが決まったらご連絡下さい」
「畏まりました」
「それで今日、アンドリューは?」
「今日は町長さんの所に仕事で向かいました」
「えっ!? もう一人で行かせているんですか!?」
私はビックリしてそう問い返していた。
「はい、彼は物覚えが良いので安心して任せられます」
「それは良かったです。ありがとうございます」
アンドリューを見込んだ私の目に狂いはなかったと分かって、私は心の底から安堵した。
「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方でございますよ。良い人を紹介して下さってありがとうございました」
今日、領地を出発して王都に向かう。
「マルガ、頑張ってね」
「は、はぃ~...」
「緊張してる?」
「す、少し...」
「あなたなら大丈夫よ。自信持って?」
私は震えているマルガリータを優しく抱き締めた。
「リーチェ様ぁ~!」
この一年で私の背は更に伸び、マルガリータはあんまり伸びなかったので、私が抱き締めるとマルガリータの顔は、私の胸に完全に埋もれてしまう。
「フガフガ~♪ クンカクンカ~♪ スースー♪ 柔らか~♪ 良い香り~♪」
マルガリータの息が当たってちょっとこそばゆくなる。
「はいはい。今生の別れじゃないんだからその辺で。ほら、マルガリータ。行くよ?」
ラインハルトはそんなマルガリータをペイッと私から引き剥がした。
「ブゥ~! ラインハルト様ぁ~! いけず~ 」
マルガリータがプクッと剥れた。そんな表情も可愛い。
「ラインハルト、後はよろしくね? お父様とお母様にもよろしく」
「お任せ下さい」
入学試験までの間、マルガリータには王都の屋敷で過ごして貰う手筈になっている。
「ほら、シンシア。あんたも早く馬車に乗りなさい」
「どうしても私も行かなきゃいけませんか...」
「なにを今更。決まったことじゃないの。さっさと行きなさい」
シンシアはまだごねている。
「リーチェ様ぁ~! 行って来ま~す!」
「行ってらっしゃい」
私は馬車の窓から手を振るマルガリータに手を振って応えた。
◇◇◇
次の日、私は劇場に赴いていた。アンドリューの様子を確認しておくためだ。
「ヘルマンさん、こんにちわ」
「これはこれはベアトリーチェお嬢様、ようこそお越し頂きました」
「アンドリューはどんな様子です?」
「良くやってくれていますよ。次の出し物で彼の書いた脚本を初めて採用することになりました。今日から稽古が始まります。よろしければ舞台をご覧になって下さい」
「それは重畳です。舞台の初日には是非とも観に来たいと思います。日にちが決まったらご連絡下さい」
「畏まりました」
「それで今日、アンドリューは?」
「今日は町長さんの所に仕事で向かいました」
「えっ!? もう一人で行かせているんですか!?」
私はビックリしてそう問い返していた。
「はい、彼は物覚えが良いので安心して任せられます」
「それは良かったです。ありがとうございます」
アンドリューを見込んだ私の目に狂いはなかったと分かって、私は心の底から安堵した。
「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方でございますよ。良い人を紹介して下さってありがとうございました」
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