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「大丈夫です。ラインハルト様が上手く誤魔化してくれて、今は仲良く三人でお茶してますから」

「あぁ、そうなのね...ラインハルトには後でお礼言っとかないと...」

 私は少しだけ胸を撫で下ろした。

「お嬢様はベッドで大人しく仮病演技を続けていて下さい。その内にアレクサンドル王子がやって来ると思いますので」

「分かったわ...申し訳ないけどよろしく頼むわね...」

 アレクサンドル王子とマルガリータがどんな会話を交わしているのかとても気になるが、かといって私がノコノコ出て行く訳にはいかない。

 私は忸怩たる思いで待つしかなかった。


◇◇◇


 やがてお見舞いにやって来たアレクサンドル王子は、私のことなどおざなりでマルガリータの話ばかりしていた。

 やれ可愛らしいだの頭脳明晰だの、とても平民だとは思えないなどなど。どうやら初対面でマルガリータの魅力の虜になったらしい。

 こちらとしては目論見通りといった所ではあるんだが、それはこんな状況で起きるはずじゃなかった。

 王立学園に入学してからになるはずだった。こんなに早く出会うはずじゃなかった。そのことが今後の展開にどのような影響を与えることになるのか?

 私としては予想外の状況になってしまったことに困惑して考え込んでしまったため、アレクサンドル王子がいつ帰ったのか気付かない程だった。

「フゥ...」

 ラインハルトがため息を吐きながら部屋に入って来た所で、私はやっと我に返った。

「あぁ、ラインハルト...ゴメンなさいね...苦労掛けたわね...」

「誤魔化すの大変でしたよ...」

「うぅぅ...ありがとうね...でもどうやって誤魔化したの?」

「マルガリータにはこう言いました『今まで内緒にしてたけど、実はお姉様は病気療養のために領地に来たんだよ』と。さすがにビックリしてましたけど、納得はしてくれたみたいです。だからお姉様もしばらくは仮病の演技を続けて下さいね?」

「分かったわ...本当にありがとう...それで今、マルガリータは?」

「アレクサンドル王子をお見送りしてます」

「そう。じゃあ今の内にメイクだけ外しておくわね」

「えぇ、そうして下さい」

 私はシンシアに手伝って貰いながら仮病メイクを洗い流した。

「ラインハルト、あの二人...マルガリータとアレクサンドル王子はどんな感じだった? 良い雰囲気だった?」

「えぇ、初対面とは思えないほど打ち解けてたように見えましたね」

「そう。良かったわ」

 私はやっと少しだけホッとした。
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