転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「お、お姉様! そ、それはいくらなんでも...」

「甘やかし過ぎって言いたい顔ね?」

「そりゃ当然でしょう...」

「まぁ聞きなさい。結局の所、ウチの領地内のみで金が回る訳なんだから、どこが負担しようが同じことなのよ。そう考えれば誰も損をしないんだから問題ないってことになるでしょう?」

「お言葉ですがお姉様、やはり甘いと言わざるを得ません。さっきのエドワードの話をぶり返す訳じゃないですが、領主としての威厳はある程度保っておくべきと愚考します。このままだと領民から『なんでも言うことを聞いてくれる領主』とか思われて、舐められたりするかも知れませんよ?」

「ラインハルト、これあなたにはまだ刺激が強過ぎると思って言わないでおいたんだけどね...不景気と重税の煽りを食らって、幾つかの小さな劇団が潰れた話は聞いたでしょう?」

「えぇ、それがなにか?」

「そういった劇団に所属していた男優や女優の何人かは、運良く他の劇団に拾って貰えたりしたんだけど、大多数の人達は路頭に迷うことになったわ。それでもお芝居することを諦め切れなかった彼らはどうしたと思う?」

「さぁ...」

「金持ちのパトロンを探したのよ。なにせ男優と女優だけに見た目は良いからね。男優は有閑マダムのオモチャになり、女優は狒々親父に春を売ったわ」

「......」

 ラインハルトが沈黙してしまった。まぁ無理もないよね。やっぱり刺激的過ぎたかな?

「体を張って稼いだお金も、たった一回公演を開いただけで消えて行ったそうよ。でも彼ら彼女らは、イヤな思いを何度しながらも金持ち連中の相手をし続けたわ。舞台に立つことを諦めなかった。お芝居に対する情熱が尽きることはなかったのよ。たとえ体がボロボロになるまで金持ち連中に弄ばれてもね...そして今、そんな彼ら彼女らはやっと安心してお芝居に集中できる環境を手に入れた。今までの苦労が報われたのよ。本当に良かったわよね。さてラインハルト、この話を聞いてもさっきと同じことが言えるかしら?」

「いえ...申し訳ありません...僕が浅はかでした...」

「分かって貰えればそれでいいのよ。シンシア、コーヒーお代わり」

 喉がカラカラだ。

「はい、どうぞ」

 すかさずシンシアが入れてくれたのだが、

「...だからなんで紅茶なのよ...コーヒーって言ったでしょ? あなた、耳悪いの?」

「コーヒーばかり飲むのは体に良くありませんから」

 シンシアはシレッと言い切りやがった。
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