転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「あの...お姉様、本当に良かったんですか?」

 今、私達は帰りの馬車の中に居る。ラインハルトが躊躇いがちにそう聞いて来た。

「なにが?」

「ですから...マルガリータのことです」

「なにか問題でも?」

「いえ、そういう訳じゃないんですが...なんというか...こう...」

「なによ? ハッキリしないわねぇ」

「お嬢様、ラインハルト様はきっとこうおっしゃりたいんだと思いますよ?」

 そこにシンシアが割って入って来た。

「マルガリータさんだけ特別扱いするのは如何なものかと。贔屓が過ぎるのではないかと。周りからそういう目で見られることを危惧なされているのではないでしょうか?」

 ラインハルトがうんうんと頷いているところを見ると、どうやらシンシアの予想は当たっているようだ。

 確かにそういったやっかみ半分で噂するような輩は出るかも知れない。だが私に言わせりゃ「それがどうした!」ってなもんで、ガタガタ言うヤツは権力を使ってでも黙らせてやろうと思っている。

 マルガリータの才能はそれだけ貴重なものなんだから。

「そんなの気にしなくていいわよ。我が領地にマルガリータが齎した財のことを鑑みれば、どれだけ特別対応したって足りなかったくらいなんだから。外野がなんと言おうとその事実さえ突き付けてやれば、間違いなく途端に静かになるわよ。断言してもいいわ」

「ハァ...なるほど...」

「マルガリータの才能をもっともっと伸ばしてあげられれば、きっと我が領地に更なる恵みを齎してくれるはず。だからこれは謂わば先行投資の一種だと思いなさいな」 

「分かりました...」

「という訳で、ラインハルト。マルガリータがウチに来たら教育係よろしくね?」

「へっ!? ぼ、僕がですか!? お姉様がやるんじゃなく!?」

「だってあなた、私より成績良いじゃないのよ」

 そう、ムカつくことにこの天才肌の義弟は、既に私よりも勉強が先に進んでいたりするのだ。本当に可愛くない...ちょっと前まではあんなに可愛かったのに...

「そりゃ確かにそうですが...僕は人になにかを教えるなんて経験したことないですよ...」

「だったら尚のこと、今の内から慣れておきなさい。あなた自身の成長にも繋がることなんだから」

「そういうもんですか...」

「そうよ。人になにかを教えるってことは、自分だけ分かってりゃいいって訳じゃなくなるんだから。相手に分かって貰わなきゃいけないんだから。つまり、相手の気持ちになって考えることが出来るようにならないといけないのよ。それが出来るようになったら、あなた自身の視野も広がることに繋がるのよ」
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