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新大橋を渡ってすぐの所にコルツ村、通称ブルーローズ村はあった。
小ぢんまりとした村で、人口はそう多くは無さそうに見えた。
「エドワード、花屋さんがどこかにあるはず。そこで停めて?」
「畏まりました」
小説の中ではマルガリータの実家は花屋を営んでいた。マルガリータはその店の看板娘だった。
しばらく通りを進むと、一際大きく目立つ花屋が見えて来た。なんとなくだがあの店のような気がした。
「エドワード、あの店の前で停めて?」
「畏まりました」
私は馬車の中から店の様子を覗き込む。居た! 間違いない! あの娘がマルガリータだ!
ピンクブロンドのフワフワとした髪にクリクリッとしたお目め。体は華奢で小柄で思わず守ってあげたくなるような小動物的雰囲気を醸し出している。
小説の挿し絵より幼い姿なのは当たり前だが、それでも一目でマルガリータだと分かる。さすがは正統派ヒロインの貫禄である。
しっかしまぁ、実物のなんとも可愛らしいこと! 看板娘として笑顔で接客している姿は思わず拝みたくなる程に尊い! こりゃアレクサンドル王子じゃなくたって夢中になるはずだわ!
このまま成長したら、そりゃ思春期の男子にはさぞかし堪らない存在になることだろうな。私はマルガリータの姿を食い入るように見詰めていた。
「あの...お嬢様、花屋に行くんじゃないんですか?」
「......」
「お嬢様?」
「うっさい。黙ってろ。今忙しい。邪魔すんじゃねぇ」
「えぇっ...」
エドワードには申し訳ないが、今の私はマルガリータの姿を目に焼き付けることで大忙しなんだ。だからもうちょっと待ってろ。
「フゥ...もういいわ...エドワード、馬車を出してちょうだい」
「え~と...花屋には寄らなくてよろしいんですか?」
「えぇ、もう十分に堪能したから」
「ハァ...」
エドワードは納得していない様子だが、今はこのまま帰るのが正解だ。間違っても、この時代のマルガリータと顔を合わせる訳にはいかない。
なぜなら小説の世界線では、私とマルガリータが初めて会うのは王立学園に入学してからということになっているからだ。
タイムパラドックスじゃないけど、この時点でマルガリータと会ってしまったりすることで、本来の歴史とかけ離れた展開になってしまうのは良くないと思ったのだ。
だから今は、幼い日のマルガリータの姿を確認できただけで満足しないと。
「エドワード、家に帰りましょうか」
「畏まりました...」
私は帰りの馬車の中で小説のストーリーを思い返していた。
小ぢんまりとした村で、人口はそう多くは無さそうに見えた。
「エドワード、花屋さんがどこかにあるはず。そこで停めて?」
「畏まりました」
小説の中ではマルガリータの実家は花屋を営んでいた。マルガリータはその店の看板娘だった。
しばらく通りを進むと、一際大きく目立つ花屋が見えて来た。なんとなくだがあの店のような気がした。
「エドワード、あの店の前で停めて?」
「畏まりました」
私は馬車の中から店の様子を覗き込む。居た! 間違いない! あの娘がマルガリータだ!
ピンクブロンドのフワフワとした髪にクリクリッとしたお目め。体は華奢で小柄で思わず守ってあげたくなるような小動物的雰囲気を醸し出している。
小説の挿し絵より幼い姿なのは当たり前だが、それでも一目でマルガリータだと分かる。さすがは正統派ヒロインの貫禄である。
しっかしまぁ、実物のなんとも可愛らしいこと! 看板娘として笑顔で接客している姿は思わず拝みたくなる程に尊い! こりゃアレクサンドル王子じゃなくたって夢中になるはずだわ!
このまま成長したら、そりゃ思春期の男子にはさぞかし堪らない存在になることだろうな。私はマルガリータの姿を食い入るように見詰めていた。
「あの...お嬢様、花屋に行くんじゃないんですか?」
「......」
「お嬢様?」
「うっさい。黙ってろ。今忙しい。邪魔すんじゃねぇ」
「えぇっ...」
エドワードには申し訳ないが、今の私はマルガリータの姿を目に焼き付けることで大忙しなんだ。だからもうちょっと待ってろ。
「フゥ...もういいわ...エドワード、馬車を出してちょうだい」
「え~と...花屋には寄らなくてよろしいんですか?」
「えぇ、もう十分に堪能したから」
「ハァ...」
エドワードは納得していない様子だが、今はこのまま帰るのが正解だ。間違っても、この時代のマルガリータと顔を合わせる訳にはいかない。
なぜなら小説の世界線では、私とマルガリータが初めて会うのは王立学園に入学してからということになっているからだ。
タイムパラドックスじゃないけど、この時点でマルガリータと会ってしまったりすることで、本来の歴史とかけ離れた展開になってしまうのは良くないと思ったのだ。
だから今は、幼い日のマルガリータの姿を確認できただけで満足しないと。
「エドワード、家に帰りましょうか」
「畏まりました...」
私は帰りの馬車の中で小説のストーリーを思い返していた。
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