転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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 翌日、ラインハルトとシンシアを連れて新劇場へと向かった。

 工事の進捗状況を把握するためだ。

「ヘルマンさん、こんにちわ」

 劇団関係者の代表ヘルマンさんには、工事の立ち会いとしてほぼ毎日のように来て貰っている。

「これはこれは、ベアトリーチェお嬢様。いつもお世話になっております」

「工事の進捗はどんな感じです?」

「はい、順調です。早ければあと一ヶ月くらいで完成すると思われます」

「それは良かったです」

 私はトンチンカンチンと木槌の小気味良い音が響き渡る旧公爵家本館を見渡した。顔馴染みの大工の棟梁が、忙しそうに弟子達と動き回っている。

「あ、そうだ。シンシア」

「はい」

「ヘルマンさん、これ差し入れです」

 私はシンシアに買って来て貰ったお菓子をヘルマンさんに渡した。

「いつもすいません。ご馳走になります」

「いえいえ、ところでヘルマンさん。工事が終わってから舞台稽古が始まるとして、こけら落としはいつ頃になりそうですかね?」

「そうですね...実は舞台稽古は既に始めておりますので、工事が完成した後は簡単なリハーサルを行えば上演できると思います。なので早ければ二ヶ月後くらいでしょうか」

「なるほど。分かりました。こけら落としの日程が決まったらすぐ連絡して下さいね? 大々的に宣伝しますんで。この町はもちろん王都にも」

「了解致しました」


◇◇◇


 新劇場を後にした私達は、その足で庭園改め農園の方に向かった。

「オットーさん、こんにちわ」

 農業専門家の代表のような立場に居るこの人はオットーさんと言う。一番最初に行った説明会の時、私へ最初に質問して来た人だ。

「ベアトリーチェお嬢様、ご機嫌よう」

「順調ですか?」

「はい、至って順調です。ビニールハウスも先日完成しました」

「それは良かったです」

 私は眼下に広がる元庭園だった場所に目を向ける。庭園だった頃の面影は既にどこにもなく、元から農園だったのではないかと思える程だ。

 ラインハルトがリサーチしてくれた、この町の住民に人気な根菜類や葉物野菜の栽培の他に、実はトマトの消費量が結構多いということが分かったので、ビニールハウスを設置しそこでトマトを栽培することにした。

 それ以外にも、私が推奨した飢饉対策のイモ類の栽培にもちゃんと着手している。

「これからもよろしくお願いしますね? シンシア」

「はい」

「こちらは差し入れになります」 

 さっきと同じようにお菓子を渡す。

「これはこれは、いつもすいません。ご馳走になります」
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