転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

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「話は以上でよろしいですか?　でしたら速やかにお帰り下さい」

　そう言って私は立ち上がろうとしたが、

「ふざけるなぁ!　まだだぁ!」

　先にフランクリンがステッキ片手に立ち上がって激昂する。どうやらステッキを使わないと歩行どころか立ち上がるのも困難らしい。よっこらしょってな感じでようやく立ち上がっている。

　だから太り過ぎだっての。少しはダイエットしろ。

「まだなにか?」

「貴様のような生意気な小娘には躾が必要だ!　儂が自ら教育してやるわぁ!　有り難く思えぃ!」

　そう言ったかと思ったら、えっちらおっちらと杖を付きながら私の側までやって来てステッキを振り上げた。

　なんだこのジジイ?　そのステッキで私を殴るつもりか?　冗談じゃない!　こんなジジイに舐められて堪るか!　

　私は素早く立ち上がって避けようとした...が、その前にラインハルトが私よりも素早く動いてフランクリンの足を払った。

「ゲコッ!?」

　次の瞬間、フランクリンがカエルみたいな鳴き声を上げながらもんどり打って床に倒れた。やっぱりこいつカエルなんじゃね?

「お見事」

　私は思わずラインハルトに対してそう言っていた。あんなジジイの攻撃なんか避けるのは難しくなかったが、その前に助けてくれたラインハルトには感謝を伝えたかった。

　ラインハルトは含羞んだような笑顔を浮かべている。はい、今日も超絶可愛い♪　眼福眼福～♪

「な、なんてことをするの!　あぁ、あなた大丈夫!?」

　そんな私とラインハルトとの微笑ましい時間を引き裂くように、エリザベスの金切り声が部屋中に響き渡る。私は思わず耳を塞ぎたくなった。

「良くもまぁ実の祖父に対してこんな仕打ちが出来たものね!　訴えてやるわ!　覚悟しなさい!」

　エリザベスはなんとかフランクリンを助け起こそうとしているみたいだが、あんな巨体を助け起こすのは老女の細腕では無理だろう。フランクリンは手足をバタバタさせるだけで起き上がれそうもない。

「なにかありましたか?」

　私は敢えて平静を装おいながらそう言った。

「な、なんですってぇ!?　あなた、目の前で起こったことをなかったことにするつもり!?　冗談じゃないわ!　そうは問屋が卸さないわよ!」

「ハァ...いいですか『お・婆・様』」

　私は大げさにため息を一つ吐いてから殊更に『お婆様』の部分を強調して言った。

「『な・に・も・な・か・っ・た・』んですよ。それともなんですか?　選りにも選ってお爺様が可愛い孫娘をステッキで叩こうとした所、逆に撃退されもんどり打って倒れましたなんていう醜聞を世に広めるおつもりですか?」