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「フゥ...ようやく一段落ってとこね。みんな、お疲れ様~」

 引っ越しは恙無く終わった。それぞれの部屋の片付けも済んで、今はリビングにみんなで集まってやっと一息吐いたところだ。

「お疲れ様でした~」

「お疲れ様です」

 ラインハルトとエドワードの二人もホッとしたような、ちょっと疲れたような表情を浮かべている。

「お嬢様、お茶をお入れしましょうか?」

「ありがとう、シンシア。お願い。あ、私はコーヒーね?」

「はいはい」

 勝手知ったるといった感じでシンシアは苦笑しながらリビングから出て行った。

「エドワード、早速明日から改築工事に着手するよう大工さん達に連絡して貰える?」

「畏まりました」

「それと劇団関係者達にも工事に立ち合うように言ってちょうだいね?」

「了解致しました」

「農園化の方は順調?」

「はい、滞りなく進んでおります。9割方完成しつつある状況といった所でしょうか」

 そう、実は既に庭園を農園に造り変えるプロジェクトの方は先に進めていたりする。これには元々庭師として勤めていた連中が、私の趣旨に賛同し全面的に協力してくれたことが大きい。

 自分の仕事場を奪われるのだ。本来は抵抗があるはずだが、快く承諾してくれた背景には、やはり彼らもこんな広大な庭園を維持管理することに疑問を感じていたというものがあったらしい。

 そりゃ確かにそう思うよな。ほとんど客が訪れないような庭園を、誰に見せるでもない庭園を維持管理するのはさぞや空しかったことだろう。意味無いもんね。

 勝手知ったる彼らの協力の元、改修工事は順調に進んだ。そしてなんと、彼らは庭師という職業から農家へと転身することに同意してくれたのだ。

 これには正直驚いた。今まで培って来た技術も庭師としてのプライドもあっただろうに。だが彼らの思い切った決断はとても有り難かった。それでなくても人手を集めるのに苦労していたからだ。

 やがて庭園だった所が次第に農園になって行くに連れ、町中でも評判になり始めて来た。働きたいと申し出る人が増えるようになって来た。一種の相乗効果ともいうべきか。そんなこんなでプロジェクトは順調に進んだという訳だ。

「そう、良かったわ。もうすぐ春になるものね。種蒔きに間に合ったわね」

 気付けば冬が過ぎ春の訪れを待つ季節になっていた。私は11歳になり、ラインハルトは10歳になった。

 ちなみに私とラインハルトの誕生日は、偶然にも一週間違いだったりする。私が先でラインハルトが後だ。だからついこないだあった誕生日会は合同で祝ったりした。
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