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「あ、そうだ。エドワード、聞きたいことがあったのよ」
「なんでございましょう?」
「別館の庭園を飾っている、趣味の悪いオブジェや彫刻なんかを造った芸術家って、もしかしたらこの町に住んで居る人だったりする?」
「左様でございます。本館内にもいくつかございますし、別館内にもいくつかございます」
「えぇ、確かに屋敷内にも何点かあったわね。ひょっとしたらこの町って、お芝居だけじゃなく芸術面の方も盛んだったりするの?」
「はい、ですがまだまだ成熟したものとはとても言えず、なんと言いますか...前衛的とでも申しますか...」
「あぁ、皆まで言わなくてもいいわ。作品を見てりゃ大体分かるから。でもそっか。芸術畑になれる土壌が最初っからあるんなら、それを利用しない手は無いわね」
「とおっしゃいますと?」
「観光地化が順調に進んで人気が出て来たら、芸術家を積極的に受け入れる体制作りに移行しましょうか」
「芸術家ですか?」
「えぇ、そうよ。この町をお芝居と芸術の町としてアピールするの。お芝居の人気が出れば脚本家や演出家を目指す若者が集まって来るだろうし、芸術の町として定着すれば芸術家の卵達も集まって来るかも知れない。そうなれば段々と洗練されたものになって行くでしょう」
「なるほど...」
「夢は膨らむわね。そう思わない?」
「えぇ、左様でございますな」
「まずは手始めに劇団関係者へのプレゼンね。そこでしっかりアピールして支持を取り付けないとなにも始まらないわ。エドワード、おもてなしの用意をしっかりお願いね?」
「畏まりました」
「ラインハルトはプレゼン当日、議事録を取ってちょうだいね?」
「議事録ですか?」
「えぇ、劇団関係者から出る意見や要望を書き留めておいて欲しいの」
「なるほど。分かりましたが...あの、お姉様。プレゼンってなんですか?」
「すいません。うっかり流しましたが私もお聞きしたかったです」
おっと! いっけね! また現代日本の言い回しが出ちゃったよ! そりゃ二人に取っちゃ聞いたことのない言葉だわなぁ。
「あぁ、ゴメンなさい。説明会っていう意味の言葉よ」
◇◇◇
それから数日後、いよいよプレゼン...もとい説明会の当日の朝を迎えた。劇団関係者は5つの劇団から計20人ほどが集まっている。
公爵家の屋敷に招かれた面々は緊張しているようだ。落ち着かない様子で辺りをキョロキョロと見渡している。まぁそれも無理ないか。おいそれと一般庶民が入れるような場所じゃないからねぇ。
「皆様、ようこそおいで頂きました。当屋敷を預かっているベアトリーチェと申します。どうぞよしなに」
貴族が相手ならここでカーテシーを決めるところだが、軽く頭を下げる程度に留めておく。
「ては参りましょうか」
まずは舞台となる予定の巨大なダンスフロアに全員を案内する。
「なんでございましょう?」
「別館の庭園を飾っている、趣味の悪いオブジェや彫刻なんかを造った芸術家って、もしかしたらこの町に住んで居る人だったりする?」
「左様でございます。本館内にもいくつかございますし、別館内にもいくつかございます」
「えぇ、確かに屋敷内にも何点かあったわね。ひょっとしたらこの町って、お芝居だけじゃなく芸術面の方も盛んだったりするの?」
「はい、ですがまだまだ成熟したものとはとても言えず、なんと言いますか...前衛的とでも申しますか...」
「あぁ、皆まで言わなくてもいいわ。作品を見てりゃ大体分かるから。でもそっか。芸術畑になれる土壌が最初っからあるんなら、それを利用しない手は無いわね」
「とおっしゃいますと?」
「観光地化が順調に進んで人気が出て来たら、芸術家を積極的に受け入れる体制作りに移行しましょうか」
「芸術家ですか?」
「えぇ、そうよ。この町をお芝居と芸術の町としてアピールするの。お芝居の人気が出れば脚本家や演出家を目指す若者が集まって来るだろうし、芸術の町として定着すれば芸術家の卵達も集まって来るかも知れない。そうなれば段々と洗練されたものになって行くでしょう」
「なるほど...」
「夢は膨らむわね。そう思わない?」
「えぇ、左様でございますな」
「まずは手始めに劇団関係者へのプレゼンね。そこでしっかりアピールして支持を取り付けないとなにも始まらないわ。エドワード、おもてなしの用意をしっかりお願いね?」
「畏まりました」
「ラインハルトはプレゼン当日、議事録を取ってちょうだいね?」
「議事録ですか?」
「えぇ、劇団関係者から出る意見や要望を書き留めておいて欲しいの」
「なるほど。分かりましたが...あの、お姉様。プレゼンってなんですか?」
「すいません。うっかり流しましたが私もお聞きしたかったです」
おっと! いっけね! また現代日本の言い回しが出ちゃったよ! そりゃ二人に取っちゃ聞いたことのない言葉だわなぁ。
「あぁ、ゴメンなさい。説明会っていう意味の言葉よ」
◇◇◇
それから数日後、いよいよプレゼン...もとい説明会の当日の朝を迎えた。劇団関係者は5つの劇団から計20人ほどが集まっている。
公爵家の屋敷に招かれた面々は緊張しているようだ。落ち着かない様子で辺りをキョロキョロと見渡している。まぁそれも無理ないか。おいそれと一般庶民が入れるような場所じゃないからねぇ。
「皆様、ようこそおいで頂きました。当屋敷を預かっているベアトリーチェと申します。どうぞよしなに」
貴族が相手ならここでカーテシーを決めるところだが、軽く頭を下げる程度に留めておく。
「ては参りましょうか」
まずは舞台となる予定の巨大なダンスフロアに全員を案内する。
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