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「それはどういったものでございましょう?」

「その問いに答える前に聞きたいことがあるのよ。この領地の識字率ってどの程度なのかしら?」

「識字率...とは?」

 エドワードが首を傾げる。

「文字を読める人の割合ってことよ。私ね、町を歩いていて気付いたことがあったの。色んな店が軒を連ねているけど、店の名前が書かれた看板を掲げている店はほとんどなかったのよ。どの店も名前の看板の代わりに、扱っている商品をデフォルメ化したような絵を掲げていたりしていたわ。それで思ったのよ。もしかしたら識字率が低いから、看板を文字で表現しても理解できないんで、絵を使って表現しているんじゃないかってね」

「それは...確かにそうなのかも知れません...申し訳ございません...そのような視点で見たことがなかったものですから、識字率は把握しておりませんでした...」

 エドワードは申し訳無さそうにそう言った。

「謝らなくていいのよ。今までがそんな感じだったんだから、識字率なんて気にすることすらなかったとしても当然だわ。でもこれからは違う。子供の人頭税を廃止する代わりに子供の教育を義務付ける」

「教育とおっしゃっいますと?」

「この町にも学校はあるんでしょ?」

「えぇ、ございますが」

「その学校に通えるのは裕福な家の子供ばかりじゃない?」

「確かに...おっしゃっる通りでございます...」

「それじゃあいつまで経ったって、一般庶民の識字率は低いままだわ。それを打破するために、教育に掛かる費用は全て無料化する。高い教育費を取ってたら、子供を通わそうなんて思わないだろうからね」

 するとエドワードは居住いを正して、

「失礼ですがお嬢様、領民にそこまでして教育を施してやる意味が私には理解できません」

「でしょうね。まぁ最後まで聞いてちょうだい。人頭税なんてもののせいで、満足に教育を受ける場を与えて貰えなかった人が大人になったとするわね? 字を読み書き出来ない人が就ける職業なんて客商売か農作業くらいでしょう。それでもなんとかお金を貯めて、自分で商売を始めようとか考えたりするとしましょう。でも字が読めなきゃ証文も契約書も理解できない。そこに付け込まれて悪いヤツに騙され金を巻き上げられてしまう。恐らくこんな悪循環が日常茶飯事的に起こっていると思うのよ。そんな状況を変えたいと思っているの。経済を活性化するためにもね。今のままじゃ貧乏人はどこまで行っても貧乏人で、裕福な人はどこまで行っても裕福なままだわ。それじゃあいつまで経っても競争原理が育って行かないのよ」
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