上 下
67 / 316

67

しおりを挟む
「あ、そうだ。エドワード、すっかり後回しにしちゃったけど、空いた時間に領地経営に関する講義をお願いね? 私とラインハルトを教育するよう、お父様から言われているでしょ?」

「はい、承っております。私の方はいつからでも構いません。如何致しますか?」

「そうね...」

 私はちょっと考えた後、

「明日からにしましょう。講義は午前中に済ませることにして、午後からはそれぞれの仕事をすることにしましょうか? ラインハルトもそれでいい?」

「はい、大丈夫です」

「それじゃあエドワード、早速明日からお願いね?」

「畏まりました」


◇◇◇


 次の日からエドワードによる領地経営の講義が始まった。さすがに現場なだけあって、王都に居た頃に父親から受けていたものよりも実践的な点が多かった。

「...簡単ですが、概要は以上になります。ここまででなにかご質問はございますか?」

「そうね...まず聞きたいのは人頭税。これって領民一人一人が対象になるってことよね?」

「左様でございます」

「子供は?」

「10歳までは無税。それを過ぎたら有税となります」

「10歳? その根拠は?」

「手に職を付けるため親の仕事を手伝い始めたり、他の職場へ奉公に出たりする年齢が10歳からというのは昔から決まっていることだからです」

「それ、誰が決めたの?」

「申し訳ございません...私めにもそこまでは分かりません...ただ昔から脈々と受け継がれて来たものとしか...」

「じゃあ言い方を変えるわ。その10歳という年齢から人頭税を徴収するっていうのは、国の法律とかでそう決められているってことなの?」

「いいえ、そういう法律はございません」

「それじゃあ各領主の裁量に任されていると思っていいのね?」

「左様でございます」

「ではただ今より我が領では子供からの人頭税徴収は撤廃するわ。15歳の成人を迎えるまでは無税とする」

 そう、この世界では前世と違い15歳が成人年齢だったりするのだ。前世の感覚で言えば15歳でも早いような気がするが、医学の発達していないこの世界の平均寿命が50歳前後であることを鑑みれば、ちょうど良い年齢なのかも知れない。

 ただそうは言っても、10歳から働き出すのはいくらなんでもちょっと可哀想過ぎる。遊びたい盛りなんだから。そう思って私は提案したのだ。

「お嬢様、それはさすがに...ただでさえ税率を下げたばっかりなのに、その上更に税収を減らしたりなんかしたら...立ち行かなくなりませんか?」

「大丈夫よ。減った分の財源を確保する手立ては既に考えてあるから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理
恋愛
入園式初日に、この世界が乙女ゲームであることに気づいてしまったカーティス公爵家のヴィヴィアン。ヒロインが成り上がる為の踏み台にされる悪役令嬢ポジなんて冗談ではありません。早速、回避させていただきます! ※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきますが、よろしくお願い致します。 ※ カクヨム様にも、ほぼ同時掲載しております。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零
恋愛
 私は、ある日思い出した。  ヒロインに、悪役令嬢たるお姉様が言った一言で。 「どうして、このお茶会に平民がまぎれているのかしら」  その瞬間、私はこの世界が、前世やってた乙女ゲームに酷似した世界だと気が付いた。  思い出した私がとった行動は、ヒロインをこの場から逃がさない事。  だってここで走り出されたら、婚約者のいる攻略対象とヒロインのフラグが立っちゃうんだもの!!!  略奪愛ダメ絶対。  そんなことをしたら国が滅ぶのよ。  バッドエンド回避の為に、クリスティーナ=ローエンガルデ。  悪役令嬢の妹だけど、前世の知識総動員で、破滅の運命回避して見せます。 ※他サイト様にも掲載中です。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。 そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。 しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

悪役令嬢は南国で自給自足したい

夕日(夕日凪)
恋愛
侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは7歳の誕生日が近づく頃、 前世の記憶を思い出し自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付く。 このまま進むと国外追放が待っている…! 焦るビアンカだが前世の自分は限界集落と称される離島で自給自足に近い生活をしていた事を思い出し、 「別に国外追放されても自給自足できるんじゃない?どうせなら自然豊かな南国に追放して貰おう!」 と目を輝かせる。 南国に追放されたい令嬢とそれを見守る溺愛執事のお話。 ※小説家になろう様でも公開中です。 ※ネタバレが苦手な方は最新話まで読んだのちに感想欄をご覧になる事をおススメしております。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

処理中です...