転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「フゥ...こんなところかしらね」

 私はすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干しながらそう呟いた。

「さすがにこれだけ溜まると大変ですね...」

 ラインハルトがちょっと疲れを滲ませながらそう応えた。

「そうね。お父様にはもうちょっとスパンを短くして、週に二、三回は送って貰うようにお願いしておきましょうか?」

「えぇ、それが良いと思います」

 私は父親に対する返信にそう付け足した後、手紙を封してエドワードを呼んだ。

「エドワード、これをお父様に出してちょうだい」

 返事がない。

「エドワード!? どうしたの!? 大丈夫!?」

「ハッ! も、申し訳ございません! ちょっとトリップしておりました...」

「えっと...本当に大丈夫?」

 私は心配になってそう尋ねた。

「だ、大丈夫です! そ、それより...お嬢様方はいつもこのようなことをなさっておいでで?」

「えぇ、そうよ。王都の屋敷に居た頃はこれが日課になっていたわ」

「さ、左様で...」

「あの頃と違うのはリアルタイムな情報じゃないから、この予測はあくまでも参考程度にして欲しいっていうこと。その点はお父様とも打ち合わせ済みよ」

「な、なるほど...」

「本当はこっちでも株の売買や先物取引なんかもしたいんだけどね。さすがに株屋はないでしょ?」

「はい、ございません」

 そりゃそうだ。現代日本と違ってネットが普及してる訳じゃないし、それ以前に電信電話すらない時代なんだからな。

 地方都市に居て中央の情報をリアルタイムで知る術がない以上。株屋なんて商売が成り立つ訳もないわな。

 そう考えると、前世の私って本当に恵まれた環境に居たんだなってつくづく思うよ。あの頃はそれが当たり前だって思って、有り難みなんて全く感じていなかったけどね。

「だからこっちはこっちで財源を確保する手立てを別に考えるしかないのよ。その手始めがこの屋敷と別館の売却。そして庭園の農園化って訳ね」

「完全に理解しました。全てはお嬢様のお心のままに」

 エドワードが深く頭を下げる。

「それはそうと、劇団の関係者及び農業の専門家を集める件はどうなってる?」

「はい、双方とも前向きに検討してくれておりまして、代表者が決まり次第連絡を頂けることになっております」

「そう、じゃあこう伝えてちょうだい。代表者に限らず興味の有る人は全員集まれって」

「よろしいのですか? かなりの人数になってしまうと思いますよ?」

「いいのよ。幅広い意見を聞いてみたいから」

「畏まりました。そのように伝えます」

「ラインハルト、説明会の日にはあなたも出席してちょうだいね?」

「分かりました」
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