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「それで話し合いの方は如何でしたか?」
「上々よ。二人とも快く改革に賛同してくれたわ」
「それは良かったです。これから忙しくなりますね」
「えぇ、そうね。だから今の内にゆっくり休んでおきなさい。今日の午後は特になにもないから」
「大丈夫です。疲れてはいません」
「ラインハルト、無理すんじゃないの。連日、初対面の人とばかり応対して疲れたって顔に書いてあるわよ?」
するとラインハルトは慌てて鏡を覗き込んだ。もちろん、本当に書いてあると思った訳じゃないだろうが。そんな仕草一つ取って見ても愛らしいんだから~♪ ホント、私からしたら眼福もんだよ~♪
だが確かに疲労の色は濃く顔に残っている。私と同じで人見知りするタイプのラインハルトに取っては、初対面の人を連日相手にするのは相当にストレスの溜まる大変な経験だったことだろう。
でも、そういうのにも次第に慣れて行かないとね。将来、公爵家を背負って立つ者ならそんなこと出来て当然。寧ろ出来なきゃその資格は無いからね。これからますます付き合いのある人達が増えて行くんだから。何事も修行だよ。
ただそうは言っても、適度な休息は必要になって来る訳で。
「シンシア、ラインハルトを部屋に閉じ込めておいて? 今日は部屋から出ないようにあなたが監視していなさい」
「お、お姉様! な、なにもそこまでしなくても...」
ラインハルトは抗議するが私はガン無視する。というか、寧ろシンシアと二人っきりになれるんだから感謝して欲しいくらいだ。部屋の中でシンシアと心行くまでイチャイチャしてりゃいい。
「畏まりましたが、お嬢様は如何されますか?」
「私のことは構わないで平気よ。これからお父様に定期報告の手紙を書くだけだから」
「あぁ、あの週一で報告する義務があると言う...」
「そうよ。面倒だけど仕方ないわ。この義務さえ果たせば後は領地で好き勝手やっていいってのが条件なんだから」
実際、ため息を吐きたくなるほど面倒だ。なにか書くことがある内はまだいいが、なにも書くことがなくなったらどうすればいいんだろう? 一言、
『特に無し』
じゃダメかな? いや、あの父親のことだから...こんなんでアッサリ済ませた日にゃ...速攻で王都に連れ戻されるわな...
私はため息を吐くのを我慢しながら便箋に綴り始めた。
「あ、あの、お姉様! ぼ、僕にも手伝わせて下さい!」
「シンシア、さっさと連れてっちゃって?」
もちろん再びガン無視した。
「畏まりました」
「お、お姉様~!」
私は、シンシアに引き摺られるようにして部屋を出て行くラインハルトを見やりながら、
「後は若いお二人でごゆっくり~♪」
と独り言ちていた。
「上々よ。二人とも快く改革に賛同してくれたわ」
「それは良かったです。これから忙しくなりますね」
「えぇ、そうね。だから今の内にゆっくり休んでおきなさい。今日の午後は特になにもないから」
「大丈夫です。疲れてはいません」
「ラインハルト、無理すんじゃないの。連日、初対面の人とばかり応対して疲れたって顔に書いてあるわよ?」
するとラインハルトは慌てて鏡を覗き込んだ。もちろん、本当に書いてあると思った訳じゃないだろうが。そんな仕草一つ取って見ても愛らしいんだから~♪ ホント、私からしたら眼福もんだよ~♪
だが確かに疲労の色は濃く顔に残っている。私と同じで人見知りするタイプのラインハルトに取っては、初対面の人を連日相手にするのは相当にストレスの溜まる大変な経験だったことだろう。
でも、そういうのにも次第に慣れて行かないとね。将来、公爵家を背負って立つ者ならそんなこと出来て当然。寧ろ出来なきゃその資格は無いからね。これからますます付き合いのある人達が増えて行くんだから。何事も修行だよ。
ただそうは言っても、適度な休息は必要になって来る訳で。
「シンシア、ラインハルトを部屋に閉じ込めておいて? 今日は部屋から出ないようにあなたが監視していなさい」
「お、お姉様! な、なにもそこまでしなくても...」
ラインハルトは抗議するが私はガン無視する。というか、寧ろシンシアと二人っきりになれるんだから感謝して欲しいくらいだ。部屋の中でシンシアと心行くまでイチャイチャしてりゃいい。
「畏まりましたが、お嬢様は如何されますか?」
「私のことは構わないで平気よ。これからお父様に定期報告の手紙を書くだけだから」
「あぁ、あの週一で報告する義務があると言う...」
「そうよ。面倒だけど仕方ないわ。この義務さえ果たせば後は領地で好き勝手やっていいってのが条件なんだから」
実際、ため息を吐きたくなるほど面倒だ。なにか書くことがある内はまだいいが、なにも書くことがなくなったらどうすればいいんだろう? 一言、
『特に無し』
じゃダメかな? いや、あの父親のことだから...こんなんでアッサリ済ませた日にゃ...速攻で王都に連れ戻されるわな...
私はため息を吐くのを我慢しながら便箋に綴り始めた。
「あ、あの、お姉様! ぼ、僕にも手伝わせて下さい!」
「シンシア、さっさと連れてっちゃって?」
もちろん再びガン無視した。
「畏まりました」
「お、お姉様~!」
私は、シンシアに引き摺られるようにして部屋を出て行くラインハルトを見やりながら、
「後は若いお二人でごゆっくり~♪」
と独り言ちていた。
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