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「ではエドワード。まず最初に、別館を管理しているハインツを呼び出してちょうだい。別館の今後のあり方も含めて話があると伝えてちょうだいな?」
「畏まりました」
「次にラインハルト。今日は町の一等地を巡って、良さそうな物件をチョイスしてみてちょうだい」
「分かりました。条件とかはありますか?」
「条件としてはまず閑静な住宅街であること。次に大通りには面してなくてもいいけど、交通の便が良い所であること。そして最後に気品が感じられる建物であること。例えば白亜の豪邸とかね。その辺りはあなたの感性に任せるわ」
「難しそうですが頑張ってみます...」
「そんなに気負わなくていいから。もっと楽に構えなさい」
私はラインハルトの頭をそっと撫でて穏やかにそう言った。
「分かりました」
私はエドワードとラインハルト達がそれぞれ出て行った後、すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
◇◇◇
しばらくすると、エドワードがハインツを連れてやって来た。
「ハインツ、良く来てくれたわね。忙しいところ申し訳なかったわ」
これはもちろん皮肉を含んでいる。祖父母が不在でなおかつ、泊まり客の一人も居ない別館が忙しい訳がない。
「いえ、お構い無く。それでお話というのは?」
「単刀直入に言うわ。この本館と別館を引き払います」
「はっ!? い、今なんと!?」
既に聞いているエドワードは平然としているが、寝耳に水だったハインツはビックリしている。まぁ無理もないが。
「聞こえなかった? 無理無駄を省く上で、金食い虫であるこの屋敷と別館を引き払うって言ったのよ」
「そ、それはまた...なんとも急なお話で...」
「急ぐ必要があるのよ。領民の不満が爆発する前にやらないとね」
「し、しかし...先代様がなんとおっしゃるか...間違いなく反対されると思われますが...」
「先代がごちゃごちゃ言って来ても無視していいわ」
「し、しかし...」
「いいこと? 私の意志は現当主であるお父様の意志でもあると思いなさい。隠居して遊び呆けている先代には口を挟む権利は無いわ。そこんとこしっかり理解しておきなさい。私は我がバレンタイン公爵家の正統後継者となる予定の者なんだから」
本当はラインハルトが正統後継者になる予定なんだけどね。でも今の時点では、まだ私にも可能性があるからウソは吐いていない。
「...畏まりました...それで屋敷を引き払った後、我々はどこで生活するのでしょうか?」
「町の一等地に引っ越す予定よ。今、物件を当たってるわ。そしてこの屋敷と別館の今後の使用法なんだけど」
私はそこでいったんタメを作ってから、
「劇場にしようと思ってるのよ」
「畏まりました」
「次にラインハルト。今日は町の一等地を巡って、良さそうな物件をチョイスしてみてちょうだい」
「分かりました。条件とかはありますか?」
「条件としてはまず閑静な住宅街であること。次に大通りには面してなくてもいいけど、交通の便が良い所であること。そして最後に気品が感じられる建物であること。例えば白亜の豪邸とかね。その辺りはあなたの感性に任せるわ」
「難しそうですが頑張ってみます...」
「そんなに気負わなくていいから。もっと楽に構えなさい」
私はラインハルトの頭をそっと撫でて穏やかにそう言った。
「分かりました」
私はエドワードとラインハルト達がそれぞれ出て行った後、すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
◇◇◇
しばらくすると、エドワードがハインツを連れてやって来た。
「ハインツ、良く来てくれたわね。忙しいところ申し訳なかったわ」
これはもちろん皮肉を含んでいる。祖父母が不在でなおかつ、泊まり客の一人も居ない別館が忙しい訳がない。
「いえ、お構い無く。それでお話というのは?」
「単刀直入に言うわ。この本館と別館を引き払います」
「はっ!? い、今なんと!?」
既に聞いているエドワードは平然としているが、寝耳に水だったハインツはビックリしている。まぁ無理もないが。
「聞こえなかった? 無理無駄を省く上で、金食い虫であるこの屋敷と別館を引き払うって言ったのよ」
「そ、それはまた...なんとも急なお話で...」
「急ぐ必要があるのよ。領民の不満が爆発する前にやらないとね」
「し、しかし...先代様がなんとおっしゃるか...間違いなく反対されると思われますが...」
「先代がごちゃごちゃ言って来ても無視していいわ」
「し、しかし...」
「いいこと? 私の意志は現当主であるお父様の意志でもあると思いなさい。隠居して遊び呆けている先代には口を挟む権利は無いわ。そこんとこしっかり理解しておきなさい。私は我がバレンタイン公爵家の正統後継者となる予定の者なんだから」
本当はラインハルトが正統後継者になる予定なんだけどね。でも今の時点では、まだ私にも可能性があるからウソは吐いていない。
「...畏まりました...それで屋敷を引き払った後、我々はどこで生活するのでしょうか?」
「町の一等地に引っ越す予定よ。今、物件を当たってるわ。そしてこの屋敷と別館の今後の使用法なんだけど」
私はそこでいったんタメを作ってから、
「劇場にしようと思ってるのよ」
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