転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

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「なるほど、弟ね。それにしたってちょっと距離感が近過ぎやしないかい?」

 そう言ってアレクサンドル王子は、手を繋いだままの私達をジト目で見詰めた。

「あら、姉弟なんですからこのくらい普通ですわ」

 本当ならラインハルトを膝の上に抱え上げて抱っこしたい所を、手を繋ぐだけで我慢してるんだからとやかく言われる筋合いはない。放っておいて貰おう。 

「それで!? 本日はどういったご用件なんですの!?」

 私は催促するようにそう言った。さっさと終わらせたかったからだ。

「あぁ、それなんだが...実はここ最近、王宮ではバレンタイン公爵の施策が話題に上っていてね? 領地の大幅な税率の引き下げ、まるで未来視するかの如く的確で積極的な財政投資、更にこの屋敷を博物館として利用しようとする大胆な発想などなど。父上も甚く気に入っていて、是非ともその手腕を学んで来いと僕におっしゃったんだ。だからバレンタイン公爵に教えを乞おうと思ってね。こうしてやって来たという訳だよ。それにね」

 アレクサンドル王子はそこで言葉を切って私の顔をチラッと見た。王子の父上ということは国王陛下のことか。そんな偉い人の所まで話が上がっているのか。

「バレンタイン公爵が常に自慢している『ウチの娘は天才なんだ!』という言葉からして、これらの施策になんらかの形でベアトリーチェ嬢が絡んでいるんじゃないかと思ってね」

 なんだと!? この父親はそんなことをポロッと漏らしていたってのか!? 私は無言で父親を睨み付けた。

 すると父親はあからさまに私から目を反らしやがった! こんの娘バカ父がぁ! 余計なことくっちゃべってんじゃねぇよ! 見ろ! ますます王族に目を付けられちまったじゃねぇか! 取り敢えず後で説教だ!

 おバカな父親のことはともかく、今はこの場をなんとかしないと。

「さぁ...なんのことやらさっぱり...恐らくですが、お父様は単に娘が好き過ぎて親バカな発言をしていただけだと思いますわ。特に他意はないかと。そうですよね!? お父様!?」

「あ、あぁ、も、もちろんそうだとも!」

 だから動揺してんじゃねぇよ! 私が誤魔化そうとしてんのバレバレじゃねぇか! それでも公爵家の当主かよ!

「本当に?」

 ほら見ろ! 王子は完全に疑いの目を向けてるじゃねぇか!

「えぇ、当然でしょう? 私のような小娘にそんな難しい話は理解できませんわよ。オホホホ」

 なんとか笑って誤魔化そうとするが、王子の疑いの眼差しは変わらなかった。

「まぁいいや。それでね、今後は定期的に僕がバレンタイン公爵に教えを乞う時間を作って貰いたくて、今日はそのお願いをしにやって来たんだよ」
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