上 下
23 / 316

23

しおりを挟む
「な、なんですって!? ど、どうしてアレクサンドル王子が!?」

「わ、分かりません! と、とにかくお嬢様! その格好で王子様の前に出るのはマズいです! 急いでお着替えを!」

「そ、そうよね...」

 私はシンシアに引っ張られるようにして自室に戻ると、部屋着からドレスに着替えさせられ髪もキレイにセットされた。

「ねぇ、シンシア。お父様は出掛けてて居ないのは聞いてるけどお母様は居るのよね?」

「いいえ、奥様はお茶会にお出掛けになっておられます」

「ウソでしょ!? 私一人で王子様を相手しろって言うの!?」

 不敬に問われたらどうしよう...しかも相手はラスボスみたいなもんなのに...困った...心の準備なんか全く出来ていないぞ...

「お嬢様ならきっと大丈夫ですよ!」

「なんなのよその根拠のない自信は!?」

「さぁ、お嬢様! お急ぎ下さい! これ以上王子様をお待たせする訳には参りません!」

「ちょっと待って待って! まだ心の準備が!」

 抗議も虚しく、またもや私はシンシアに引き摺られるようにして、アレクサンドル王子の待つ客間へと連れて行かれたのだった。


◇◇◇


「お、お初にお目にかかります。バレンタイン公爵家が長女ベアトリーチェと申します...」

 私は緊張して噛みそうになりながらも、なんとか無難に挨拶してカーテシーを決めた。

 どうやら以前のベアトリーチェが体に叩き込まれていたようで、前世ではもちろんカーテシーなんてしたことなかったけど、体が勝手に反応してくれたようだ。

 ちなみにバレンタイン公爵家というのが我が家の名跡である。

「突然お伺いして申し訳ありません。アレクサンドル・フォン・フィンウェイです。よろしくお願い致します」

 そう言って金髪碧眼の美少年がペコリと頭を下げる。私はしげしげと観察してみた。当たり前だが小説の挿し絵に描かれていた姿からは想像できないほどに幼い。

 だが確かにその片鱗は感じさせる。このまま成長すれば挿し絵の通りになるのだろう。

 小説の中のベアトリーチェが夢中になったのも分かるような気がする。美少年であることは間違いない。だがしかし、今の私の精神年齢は二十歳前の大人だ。つまり私から見たらショタだ。

 無いな! 恋に落ちるなんて有り得ない!

『YES! ショタ NO! タッチ!』だよ! 間違って手を出したりなんかしたら犯罪だっての!

 私は心の中でそう思いながら、アレクサンドル王子の突然の来訪理由を考えていた。少なくとも思い至る節はないと思う。もっとも両親の方になにか用があったのかも知れないけど。だったら申し訳ないけど出直して貰わないと。

 一体なにしに来たんだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです

gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!

天田れおぽん
恋愛
タイトルが「イケオジ辺境伯に嫁げた私の素敵な婚約破棄」から「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」に変わって、レジーナブックスさまより発売されました。 よろしくお願いいたします。m(_ _)m  *************************************************  わたくしは公爵令嬢クラウディア・エクスタイン、18歳。  公爵令嬢であるわたくしの婚約者は王太子。  王子さまとの結婚なんて素敵。  あなた、今そうお思いになったのではなくて?  でも実際は、そう甘いモノではありません。    この小説は、わたくしの不運なようでいて幸運な愛の物語。  お愉しみいただけたら幸いですわ♡

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

処理中です...