上 下
20 / 316

20

しおりを挟む
「り、リーチェ...本気で言ってるのかい!? いや正気で言ってるのかい!?」

「本気だし正気ですよ? ねぇ、お父様。このバカでかい屋敷を維持する上で、一番費用が掛かるのはなんだと思いますか?」

「そ、それは...」

「人件費ですよ」

 私は断言した。

「いいですか? 考えてもみてください? 私達親子三人が暮らすこの屋敷には常時50人以上の使用人が居るんですよ? 親子三人に対して50人以上ですよ? いくらなんでも過剰だと思いません? しかも年間を通じて大した来客数もない別館に関しても、常時20人弱居るんですよ? これだけ費用対効果が出ない物も珍しいと思いませんか? 余剰人員の整理をするだけでも、年間どれだけの予算が浮くか想像してみてくださいよ?」

「そ、それはしかし...言いたいことは分かるが...」

「お父様、私もなんの考えも無しにこんなこと言ってるんじゃありませんよ? 仮にこの土地とこの屋敷が先祖代々受け継がれて来た大事な場所だって言うなら、私だって軽々しく口には出さなかったでしょう。でもそうじゃないんでしょう? たかだか20年くらい前に先代が建てた物だって聞きました。だったらこの屋敷を引き払って別館に移り住んでもなにも問題ないんじゃありません? 私達親子三人が住むだけなら別館の規模で十分ですよ? 寧ろそれでも大き過ぎるくらいです。そして引っ越す際には余剰人員をカットしましょう。それはこの本館、別館両方ともね」

「......」

 自分の意見を一気に言い放ってみた。父親は沈黙してしまった。

「あぁもちろん、カットされた人員、つまりリストラされた人達には次の職場を紹介すると共に、退職金を多目に渡すようにちゃんとケアするようにします。一時的に持ち出す金は多くなるけど、毎月毎月の給料を支払うことに比べたら微々たるものですよ。すぐに元は取れるはずです」

 父親はしばらく沈黙した後、

「...なるほど...僕はそんなこと考えもしなかったよ...リーチェは凄いな...良く考え付いたもんだ...確かに君の言う通りだ。僕は安定した身の上に胡座を掻いていて、変化することを無意識に恐れていたのかも知れない。今すぐという訳には行かないが、今日君に言われたことは急ぎ検討してみることにするよ」

「お父様! ありがとうございます!」

 良し! これで後継者への第一歩を踏み出せたぞ! これからも私が有益だってことを示していかないとな!

 私は気合いを入れた。

「リーチェ、他にもなにか気になったことはあるかい?」

 そう言われて私は考え込む。実は領地経営に関しての資料を見ていてちょっと気になることがあった。

 だがこれは、直接自分の目で見てみないとなんとも言えないと思っていた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです

gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!

天田れおぽん
恋愛
タイトルが「イケオジ辺境伯に嫁げた私の素敵な婚約破棄」から「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」に変わって、レジーナブックスさまより発売されました。 よろしくお願いいたします。m(_ _)m  *************************************************  わたくしは公爵令嬢クラウディア・エクスタイン、18歳。  公爵令嬢であるわたくしの婚約者は王太子。  王子さまとの結婚なんて素敵。  あなた、今そうお思いになったのではなくて?  でも実際は、そう甘いモノではありません。    この小説は、わたくしの不運なようでいて幸運な愛の物語。  お愉しみいただけたら幸いですわ♡

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

処理中です...